かゆい! 犬のアトピー性アレルギー (1)

文:アルシャー京子

痒い。散歩をしていてもそれどころじゃないほど、痒い。[Photo by Kristian Niemi]

このところ犬のアトピー性アレルギーが徐々に増えてきている。白い毛並みと色素の薄い皮膚を持つ犬では特にこの傾向にある。その発症率は10%とも15%とも言われ、しかもこの傾向は先進国において著しく、その理由は診断技術の進歩と、そして犬が室内で多く飼われることにあるという。

アトピー性アレルギーは様々なアレルギーの中でも特に遺伝による先天性の性質で、免疫グロブリンE(IgE)が介在する「環境アレルギー」だ。環境アレルギーの引き金となるアレルゲンは以下のようなものが挙げられる。

  • 外部寄生虫
  • 花粉
  • カビ、真菌
  • ハウスダスト、フケ

「アトピー」とは「特定部位がない」という意味だが、中でもとりわけアレルギー反応として発症しやすい部位は皮膚(顔面、内腿、指の間など)、結膜、鼻腔粘膜。季節によって発症の差があり、アレルギー反応を引き金として皮膚の腫れと痒みを伴ううえ、一度鎮静しても再発を繰り返す。

アトピー性アレルギーにはさらに地形や気候条件、飼育条件が大きく関与し、犬の場合特に「飼育条件」がもっとも大事な要因とされる。

昔に比べて犬が室内で飼われることが多くなった現在、犬は戸外において自然環境内に分布する雑菌と触れ合う機会が少なくなった。室内に飼われることで雑菌と触れ合う機会が少なくなると、犬が本来持ち合わせる免疫機能が手持ち無沙汰になる。そしてどこか反応できる機会がないかと探し出す。本来攻撃対象でないはずの周辺環境にある花粉や外部寄生虫由来のタンパク質(ノミの唾液など)はその良いターゲット。屋内に散りばめられているハウスダストなど、もっとも手っ取り早いターゲットとしてその抗体を作り出す。これは一般的なアレルギー発症の要因であり、アトピーも例外ではない。

暇をもてあますとろくなことをしないのはヒトも犬も免疫機能も同じ、衛生的な環境で育つことの弊害がここに来てでてきたというわけだ。「自然」と言うものをもう一度考えさせられるいい機会ともいえる。

犬種としてこの先天性疾患が現れやすいのは70年代のアメリカではジャーマン・シェパード、プードル、アイリッシュ・セターなどであり、80年代のオランダでボクサー、テリア、ジャーマン・シェパード、プードル、90年代のイギリスでボクサー、ラブラドール・レトリーバー、テリア、同じくギリシャではテリア、シャーペイ、コッカー・スパニエルとそれぞれその時代での人気犬種が多く上がっている。

日本で言えばウェスティーやダックスなどの小型犬種を中心にレトリーバー系の人気犬種にも発症が多いことは想像に易いことだろう。

痒い、痒い。見ている方はただ悲しい。犬のQOLを下げる憎い疾患のひとつ。[Photo by BennettBoxers]

アトピー性アレルギーとして発症した場合、皮膚炎が最も発症が多く、またその診断を下すまでに他の疾患の疑いを否定する必要がある。同じような皮膚炎症状を起こす疾患には上記に挙げたように、ノミの唾液アレルギーやデモデックス、細菌・真菌の感染、さらには食物アレルギーがあり、それらに対する疑いをひとつひとつ打ち消してゆかなければいけない。

試しに薬を投与してみたり、血清だけのテストでアレルギーと診断するのは早すぎる。アレルゲンの皮下注入によるテスト(Intracutan Test:ICT)はそれよりもまだ参考になるけれど、例えハウスダストに反応した結果が出ても環境要因としてはどうしても取り除くことができない。

アレルギーで愛犬が苦しんでいるならば以下の項目を見て当てはまるものの数を数えてみよう。(「P. Prelaudの判断標準1998」より)

  • 最初の症状が生後6ヶ月から3歳までに現れた
  • 両足の指の間に赤味・痒みがある
  • 外耳が赤い
  • 外耳炎を繰り返す
  • 外唇に炎症がみられる
  • ステロイド剤を用いると痒みが治まる
  • 犬種あるいは血統・親戚内でアトピーの発症が知られている
  • 皮膚炎になりやすい
  • 毛艶がいまいち
  • 後肢に赤味・痒みがある
  • 同じ箇所を舐める
  • 足の裏に多く汗をかく
  • 痒みが酷くなる前に蕁麻疹や浮腫(皮膚の腫れ)症状があった
  • 季節によって症状に差がある(高温多湿で悪化)
  • 緑地あるいは特定の場所にゆくと痒みや症状が悪化するようだ

これらの項目のうち4つ以上当てはまるものがあるうえ、疑いのある疾患原因が否定され、犬の検査値や症状が伴っているといよいよアトピー性皮膚炎との診断が下る。

診断されて、さてどうしよう?これを次回にお話しよう。

(本記事はdog actuallyにて2009年10月6日に初出したものを一部修正して公開しています)

【関連記事】

かゆい! 犬のアトピー性アレルギー (2)
文と写真:アルシャー京子 【Photo by Thomas Hawk】 愛犬が例えアレルギーを持っていても、引き金となるアレルゲンが外部寄生虫…【続きを読む】