ペットの熱中症:炎天下の車内に置き去りにされたペットの救出方法

文:サニーカミヤ


[image from 一般社団法人 日本国際動物救命救急協会]

先日、世田谷区役所で行われたペット関係のイベントで、ペット保険の営業の方とお話した際、東京都世田谷区は、犬、猫、小動物などのほ乳類ペット数が約12万頭以上(犬約4万頭、猫約5万頭、小動物約3万頭)と、日本一ペットの多い区だということを知りました(2016年時点)。

また、毎年、5月〜9月になるとペットの熱中症関連の保険申請が増えるとも仰っていました。ペットたちは、どのようにして熱中症になるのでしょうか?

よくあるペットの熱中症事例

  • 冷房までいらないと思ってペットを閉め切った室内に留守番させて会社に行ったところ、予想以上に日中の気温が急激に上がり、帰宅したら、数カ所に置いてある飲み水の容器がすべて空になっており、ペットがグッタリしていた。
  • カーテンをせず直射日光が室内に入り込む状態で、ケージの中などに入れ、犬が自分で涼しい場所に移動できない状態で留守番させてしまいペットが熱中症になっていた。
  • ペットを車に乗せて買い物に行き、曇っていたので雨が降るかもと思い、窓も開けず、エアコンも付けずに駐車し、ペットを待たせたところ、買い物をしている間に日差しが強くなり、車内の温度が急上昇し、たった15分程度で熱中症のような症状になってしまった。
  • スーパーマーケットの駐車場で、日陰だったのでエアコンの代わりに窓を少し開けた状態でペットを留守番させたところ、戻ってきたら直射日光が当たっているうえ、風通しが十分でなかったのと、不慣れな車内での留守番に人が通るたびに犬が興奮したため、体温が急上昇してしまった。

などなど、何も知らずに閉じ込められたペットは可哀想ですよね。

ペットの車内閉じ込め救出事案は、日本ばかりではなく、アメリカでも毎年かなりの件数が発生しています。


ボストン市消防局のペット救出現場映像。


消防士が車のドアを開けるために使っている道具のビデオ。

アメリカでの車中からのペット救出

車のオーナーが現場にいる場合
オーナーが鍵をなくしてしまい、車内のペット救出要請をした場合は、車のドアを開けるための同意書にサインをもらい、上記のビデオにあるようなツール30秒ほどでドアを開けるか、ツールが無い場合は車の窓を割って救出する。

車のオーナーが現場にいない場合
消防士、警察官など2人以上が緊急避難により早急に救出する必要があると認めた場合は、レスキューツールで車の窓ガラスを割って救出する。なお、救出後は、少しずつ水などを与えて落ち着かせ、リードをつないで、車道に出ないように監視すること。また、警察に車のライセンスプレートから飼い主を探してもらうこと。

ここで状況シミュレーション訓練です。

下記のビデオを参考に車の窓を割って車内のペットを救出する場合に気をつけなければならないことを、3つ以上挙げてください。正解は後ほどに!※すぐに解答を見ないように!(笑)

なお、どのような理由でも、動物を長い間、暑い車内に閉じ込めた状態にした場合、日本円にして約12万円〜52万円の罰金、または、6ヶ月から10年の禁固刑に処せられます。また、場合によっては飼い主は当該動物の所有権を失い、二度と動物を里親施設などから譲り受けできなくなります。

■↓アメリカは州によって動物虐待に対する罰金の額や拘留期間が違います。
http://www.straypetadvocacy.org/PDF/AnimalCrueltyLaws.pdf

日本も同じように動物虐待は懲役や罰金に処せられます。

■↓動物愛護管理法
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/aigo.html

熱中症の見分け方
・よだれを垂らして横たわっている
・あえぐような呼吸をしている
・耳を触ると、いつもより熱い
・声をかけても、横になったままで苦しそう
・意識がないか、あっても目しか動かさない

ビデオの解答:車の窓を割って車内のペットを救出する場合に気をつけなければならないこと

ペットを救出するためとはいえ、他人の車の窓ガラスを割る行為は理屈の上で『器物損壊罪』にあたります。ただし、当該行為が『正当防衛』として犯罪ではないと評価される可能性があります。

暑い夏の車内にペットを放置すれば、ペットの生命・健康に被害を与えることは誰でも分かることなので、放置行為は犯罪行為(保護責任者遺棄致死傷罪、動物の愛護及び管理に関する法律第 44条第2項(虐待)または、第3項(遺棄)、重過失致死傷罪)といえます。

このような犯罪行為に対して、過去の判例では、ペットの生命・健康に危険が迫っているという状況下で窓ガラスを割って、ペットを救出する行為は正当防衛と評価され、処罰されない可能性が高いことがほとんどです。 窓ガラスを割る際は、ペットがいる場所から一番離れた窓ガラスのドアロック近い端を割ってドアロックを解錠しますが、できるだけ、ガラスが飛散しないよう必要最低限の衝撃を与え、割れたガラスでペットがケガをしないように注意することが必要です。

当然ですが、放置されたペットは犯罪行為をしていません。先ほどの正当防衛は犯罪行為に対するものなので、ペットにケガをさせた場合、窓ガラスを割る行為には正当防衛は成立せず『緊急避難』が成立するかどうかが問題となります。『正当防衛・緊急避難』が成立しない場合には窓ガラスを割る行為の全てが犯罪として処罰されるかというと、形式的に犯罪には当たるけれども検察庁において不起訴処分とされ、実際には処罰をしないという判断が下される可能性が大きいことが言えると思います。

1. 車内のペットの様子を見て、状態を録画し、ハーネスやリード、首輪をしているかを確認します。車の窓を割るときには、ペットの毛に割れたガラスの破片が絡まったり、割れた窓からペットが逃げ出したり交通事故等に遭わないよう、ペットのいる位置から一番遠いガラスを割ります。なお、車のガラスを割る箇所は、窓の中央と取っ手側の端との真ん中(以下写真のピンクの 点の位置)。ドライバーなどの工具や缶コーヒーの底の角、ステンレスの水筒の底の角などで割ることができます。


[photo from wikimedia]


ツールを使うと簡単に割れる。

2. 激しく吠える等、ペットが興奮状態にある場合には体温上昇が加速し、熱中症が悪化してしまいます。また、窓ガラスを割った後、すぐに飛び出してきたり咬みつかれたりすることもあります。そのため、換気だけを行い飼い主を待つか、人に馴れている場合にはゆっくりとドアを開放し、ハーネスについたリードを短く保持して逸走防止を確実に行った上で、抱ける大きさであれば日陰などに連れて行き、体を冷やしながら、必要があれば水を少しずつ与えます。

3. 真夏日の場合、アスファルトは摂氏60度近くになることがあるため、熱くなっているアスファルトにペットを寝かせないようにします。もし、日陰がなければ、車の脚マットなどの上に寝かせ、常温の水で濡らしたタオルで気化熱効果を利用し、徐々に「胸腹部の毛の少ない部分」を冷やすこと。
※氷水は急激に血管を縮め、バランス良く内臓を冷やせないため、常温の水で胸腹部全体を徐々に冷やすのが望ましい。

4. もし、ペットの意識がある場合は、ミネラルウォーターではなく適量の電解質(塩化ナトリウム/塩)や糖分が含まれた、人間用の経口補水液などを3倍に薄めて飲ませるほうがよいそうです。夏場は、犬用の経口補水液を持ち歩くといいでしょう。

今年の夏は猛暑になりそうです。熱中症はとにかく予防が大事。3月中旬から6月くらいの真夏になる前の時期は油断しやすく、クーラーのきいていない部屋での留守番や車内での買い物待ちのときに熱中症が起こりやすいと言われています。人間の心肺蘇生法講習などで、熱中症について話す機会がありましたら、ペットの熱中症についても少しだけお話しいただけると幸いです。

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日本での車の窓ガラスを割っての犬や子どもの救出に関する事例を取り上げた記事がありましたので、参考までにご覧いただければと思います。

猛暑日に犬が他人の車で置き去り 窓を割り救ったら罪になるか
 暑さが続くこの季節になるとよく目にするのが、「車の中に置き去り」というニュース。乳幼児が熱中症にかかって亡くなることもあるが近年は、啓発活動によりその危険性はかなり周知された。…
炎天下の車内に放置された子どもを発見 窓ガラスを割ってもOK? - ライブドアニュース
駐車場で車内に子どもを放置して、買い物やパチンコなどをする保護者が後を絶たず、毎年夏になると、熱中症で子どもが死亡するという悲劇が繰り返されている。そこで、全国でパチンコ店を営業するマルハンでは、車内
ここにご紹介したコンテンツは、私がインストラクターとして所属している2つの団体、アメリカ最大のペット救急法指導団体であるPetTechのThe PetSaver™ Program、そして、消防士のためのペット救急法指導団体、BART(Basic Animal Rescue Training)ら出典しています。
PetTech
http://www.pettech.net/
BART(Basic Animal Rescue Training)
http://basicanimalrescuetraining.org/
BARTのブログで紹介されました。
http://goo.gl/ZoJoX6

本記事はリスク対策.comにて2016年6月27日に初出したものを一部修正し、許可を得て転載しています

文:サニー カミヤ
1962年福岡市生まれ。一般社団法人 日本防錆教育訓練センター代表理事。元福岡市消防局でレスキュー隊、国際緊急援助隊、ニューヨーク州救急隊員。消防・防災・テロ等危機管理関係幅広いジャンルで数多くのコンサルティング、講演会、ワークショップなどを行っている。2016年5月に出版された『みんなで防災アクション』は、日本全国の学校図書館、児童図書館、大学図書館などで防災教育の教本として、授業などでも活用されている。また、危機管理とBCPの専門メディア、リスク対策.com では、『ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために』を好評連載中。
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