文:尾形聡子
[photo by Elena Giglia]
犬が人の指差しに反応する能力を持つ動物であることが科学的に証明されてからというもの、犬の認知行動学という学術分野は大きく花開き、躍進し続けています。世界中の研究者たちがあの手この手を使って、犬がどこまで、どのような社会認知能力を持っているのかを探究する研究が絶え間なく行われており、犬曰くでもこれまでそのような研究の数々を紹介してきました。
しかし、「犬の指差しに対する理解力、認識能力なのか学習なのか?」で藤田りか子さんが考察されていたように、ひとつの研究で証明されたからといって、必ずしもそれが真実であるとは限りません。科学はトライ&エラーを繰り返しながらひとつの真実に近づいていくという、とても地道な作業でもあるからです。犬研究の中でそれをよくあらわしている代表的なものとしては、犬の家畜化にまつわる議論が挙げられるでしょう。
犬の認知行動学の分野ではどうかといえば、「犬の社会的な認知能力は遺伝なのか?それとも環境(学習)なのか?」という議論が続けられ、数々の研究が行われてきています。そんな中、「とある認知行動」については確実に一歩真実に近づいたのではないか?、そんなふうに思わずにはいられない研究が発表されました。米アリゾナ大学の研究者らが、犬の基本的認知能力の御三家ともいえよう、「指差し」「アイコンタクト」「人へ助けを求める」行動について、新たな答えを導きだしたのです。