文:尾形聡子
[photo by LAURIE BURKE]
通常、生物は同種間で関係を構築するものですが、犬は異種である人と絆を形成できる能力を備えているのは皆さんよくご存知のこと。かといって犬は同種との関係性をつくる能力を失ってしまったわけでなく、ほかの犬とも関係を築ける社会性を持ち続けています。
犬の社会的認知能力についてはさまざまな研究が行われていますが、関係性についての研究は犬と人との関係、または犬と犬との関係いずれか一方に焦点があてられているものでした。犬と人との関係で有名な研究にはオキシトシンを介した絆形成が挙げられるでしょう。また、犬は飼い主に対して子どもが親に寄せるのと同じような信頼を持つことや、人を頼りに行動決定(社会的参照)することも示されています。
一方で、犬と犬との関係については、人との関係性とは違う部分に目が向けられ、たとえば野良犬の群れの中での優位性、食物分配、犬同士の協力作業など、主にオオカミとの比較により犬がどう進化してきたかを研究するものが多くみられます。そのため、これまでの研究からでは犬は人または犬に対して築いてく関係性が同じようなタイプなのか、もしくは違うのかをはかることができません。
犬は人にだけ特別な社会的行動をすることで異種間の関係性を築いているのでしょうか。それともその社会的行動は人だけでなく同様に犬に対してもしているものなのでしょうか。そこに着目したウィーン獣医大学の研究者らは、犬が飼い主とつくる関係性と、同居犬との関係性に違いがみられるかどうか研究を行い、