ケネルクラブの役割 「スウェーデンに学ぶ完全ブリーディング・コントロール」藤田りか子さんセミナーレポート その1

文:尾形聡子

[photo by Rikako Fujita]

2013年9月5日、藤田りか子さんによるセミナー「スウェーデンモデル~スウェーデンに学ぶ完全ブリーディング・コントロール」が東京・青山のセミナールームにて開催されました。今回のセミナーは、藤田さんと、藤田さんの記事でもお馴染みのデンマークのドッグトレーナー、ヴィベケ・リーセさんのお二人の来日に合わせて、ドッグトレーナー養成スクール「PALYBOW Dog Trainers Academy」が主催したものです。質の高いドッグトレーナーを養成していくことを通じて”ペットの殺処分ゼロ”の社会を目指すことをスクール理念として掲げているPLAYBOWでは、専門職としてのトレーナー養成のみならず、人と犬とがよりよく共生できる社会になるためにとの思いから、一般の人々に向けてもさまざまなセミナーを積極的に企画・開催しています。

スウェーデンの特徴:ケネルクラブの組織力の強さ

[photo by Satoko Ogata]

スウェーデンでは、ケネルクラブの力が強いことが大きな特徴だといいます。そもそも犬を飼ったらケネルクラブに登録するのが普通で、ケネルクラブのいうことには犬の飼い主はみな耳を傾けるような社会になっているそうです。

「ケネルクラブはとてもよく統合された大きな組織です。ケネルクラブの下には各犬種それぞれの犬種クラブがあり、その下にはたくさんのローカル・クラブがあります。さらに犬種クラブと同列の位置に、ワーキングドッグ・クラブという組織があります。ワーキングドッグ・クラブは、犬の訓練や気質テストなどを行っている団体です。そのほか、ブリーディング委員会、ドッグショー委員会などのさまざまな委員会もケネルクラブの傘下にあります。スウェーデンでは、ケネルクラブをトップにして各方面の専門家が所属する団体がそれぞれ犬作りに参加し、尽力しています。要するに、ケネルクラブは犬を作る大きな団体だということです。」

スウェーデンのケネルクラブの力の強さは、組織の統合力から生じています

「もちろん別の国にもケネルクラブや犬種クラブなどはありますが、たとえばアメリカですと、AKC(アメリカのケネルクラブ)がありながらも AKC に対抗するようにして同じような団体があったり、同じ犬種でもいくつもの犬種クラブがあり、ある犬種クラブは AKC の傘下、あるところはまた別の団体の傘下というように、非常にごちゃごちゃとしていて統制が取れなくなっている状況にあります。」

スウェーデンのように、ケネルクラブを頂点として犬種クラブなどの各団体の統制がとれていることの利点には、遺伝病や健康状態、気質などのデータがすべてケネルクラブに集約される仕組みになっていることがあるといいます。各犬種それぞれのデータがひとところに統括されることで、それぞれの犬種で何が起きているのか?ということが風通し良く分かりやすくなるのです。

「ケネルクラブに登録されている各犬の情報はすべてデータベース化されていて、誰でもインターネットを使って調べることができます」

ケネルクラブの試み:ブリーダーへの徹底した教育

[photo by Rikako Fujita]

スウェーデンでは国の制定する動物愛護法が基本にあり、動物の福祉が守られています。そして動物愛護法に基づいて、独自のルールを作って活動を行うケネルクラブがその下に存在しています。

「ケネルクラブが独自で行っている活動のひとつにブリーダーの倫理観の育成があり、そのために、ケネルコンサルタントと呼ばれる業務を行う人がいるのが特徴です。ケネルコンサルタントは各自治体に配置されていて、犬舎へ抜き打ち検査をしに行き、愛護法に則った状態にあるかどうかをつぶさに調べる仕事をしています。ケネルコンサルタントへの教育はケネルクラブが1年半から2年半かけて行っていますが、誰もがケネルコンサルタントになれるわけではなく、ブリーダーとしての知識と経験を持つ人しかなれません。さらにケネルコンサルタントは、ブリーダーのブリーディング倫理が守られているかを調べることに加え、ブリーダーに対してコンサルティングも行なっています。」

ブリーダーにとってのケネルコンサルタントは、抜き打ちチェックをする嫌な存在ではなく、むしろ何か困ったことがあれば相談役として力になってくれるありがたい存在となっているそうです。つまりケネルコンサルタントは、倫理的にも知識的にもよりよいブリーダーを育成していくために重要な役割を果たしています。

「ケネルクラブにはケネルクラブの原則というものがあり、ブリーディングのルール、ブリーダーのルール、譲渡のルールの3つの大きな柱で成り立っています。3本の柱それぞれに細かなルールが決められています。たとえば、メス犬が生涯に妊娠してもいい回数の上限の制定、マールの毛色同士の掛け合わせの禁止、子犬は8週齢までは母犬と共に過ごして犬や人に対して十分な社会化を施すこと、などです。これらのルールがすべて守れていなければ、子犬が生まれてもケネルクラブに登録することができないようになっています。」

ケネルクラブはケネルコンサルタントだけでなく、ブリーダーを直接教育する制度も持っています。

「スウェーデンのようなケネルクラブによるブリーダーの教育制度は、日本のこれからに必要なことと思います。いかにしてよりよいブリーダーになるか、そのための手助けをケネルクラブがしています。」

ブリーダーの教育制度として、6つの基礎項目、ブリーディングに関わる法律、子犬の行動学、犬の解剖学、犬の栄養学、犬の遺伝学、犬の繁殖学について学ぶカリキュラムが組まれているそうです。

「ブリーダーはいい犬を作って売るだけではなく、その後の犬の成長を追っていくことも大切とされています。ですので、飼い主たちに向けてパピー・パーティやケネル・ミーティングを開催したり、ドッグショーや競技会への参加、メンタリティテストという犬の気質を測るテストを受けるよう勧めたり、自ら開催したりもします。このようにフォローアップをしていくことで、自分の行っているブリーディングを健康面から気質面に至る、全てにおいて確認することができるわけです。そうすることで、さらにいい犬を作ることへと繋げていけるのです。」

(本記事はdog actuallyにて2013年10月8日に初出したものを一部修正して公開しています)

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