犬種別に見た愛犬運動量の統計結果

文と写真:藤田りか子

「健康維持に、犬を飼うのがよし」というスローガンが最近マスコミで出回っている。犬がいればどうしても散歩に連れて行ってあげなければならない。それで否が応でも人は動くようになるので健康も向上する、という希望的観測に成り立つものなのだろう。とは言ってもどのタイプの犬を飼うか、にもよるかもしれない。イギリスのリバプール大学の疫学研究者であるキャリー・ウェストガースさんらは世界で初めて犬種別飼い主による運動量調査(2017)を行った。さてどの犬種が一番アスレチックな毎日を約束してくれるか、皆さんは推測できるかな?

チワワの飼い主の4%が散歩ゼロ!

この研究は2014年イギリスの国営放送BBCチャンネル4のドキュメント番組「Dogs: Their Secret Lives」制作における調査の一環として行われた。研究者は飼い主が一週間にどれだけの頻度で、さらに一回の散歩につきどれぐらいの時間、運動をさせるかについてオンライン・アンケートをとった。純血犬種の数は全部で71種。犬の数は約12,300頭。そしてその結果!

驚いたことに、一週間に0回と回答する人もいた。ほとんどのケースはその犬種の飼い主のうち1%ぐらいなのだが、ただしチワワについてはなんと4%もの人が全く散歩を与えないことがわかった!超小型犬ゆえに、散歩をサボる人がいるのは何処も同じということだろうか。これは決して褒められたものではない。なんと言っても犬は大きさに関わらず皆外に出て歩いたり臭ったりする刺激を心から楽しむ動物だ。

アクティブなのは断然ガンドッグ犬種の飼い主

反対にたくさん運動をもらっている犬種というのはどんな犬たちなのだろう?この報告書に発表されているデータを利用してランキング表を作ってみた。1日に2回以上の運動を入れているというアクティブ飼い主が過半数を占める犬種ベストテンは以下の通りだ。(注:サンプル数が30以下の犬種は省略)

ハンガリアン・ビズラ           79%

ジャーマン・ポインター          71%

グレーハウンド              69%

ミニチュア・シュナウザー         65%

ベアデッド・コリー            64%

イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル 64%

ケアン・テリア              64%

ボーダー・コリー             62%

アイリッシュ・セター           62%

ラブラドール・レトリーバー        61%

表1 一日2回以上運動を与えられている犬種ベストテン。%はその犬種内の飼い主の割合を示す。

さらに飼い主のほぼ3割以上が一回の散歩について一時間以上を費やすという犬種は以下の通り。(注:サンプル数が30以下の犬種は省略)

ジャーマン・ポインター          39%

アラスカン・マラミュート         38%

ダルメシアン               35%

ハンガリアン・ビズラ           29%

ワイマラナー               29%

表2 一回の散歩について一時間以上を与えている飼い主がほぼ3割以上を占める犬種。%はその犬種内の飼い主の割合を示す。

ハンガリアン・ヴィズラはHPR種(Hunting Pointing and Retrieving)の部類に属するマルチ使役が可能なガンドッグだ。ヨーロッパでは家庭犬としても飼われているが、多くは狩猟にて活躍するアクティブな犬種。

ウェストガースさんらは犬種のグループ別での運動量の傾向も調べている。グループ分けはイギリスケネルクラブが指定しているカテゴリーによる。すると案の定ガンドッグと牧羊犬に属する犬種が一番頻繁に運動をもらえていたということだ。これは表1の結果を見ても明らか。軒並みガンドッグが上位を占めている(ハンガリアン・ヴィズラ、ジャーマン・ポインター、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ラブラドール・レトリーバー、アイリッシュ・セターはいずれもがガンドッグ)。表2の結果でもダルメシアンとアラスカン・マラミュートを除いてガンドッグ種が占めている。

飼い主の趣味やライフスタイルが犬の運動量を決定する

さて冒頭でも記したが、この結果を見て安易に

「人に運動を促したいのであれば、ガンドッグを飼うべき」

なんていう宣伝はできるものなのだろうか?

ハンガリアン・ヴィズラ(以下ヴィズラ)の飼い主においてはほぼ8割(79%)もの人が一日2回以上運動を与え、約3割は一回につきの運動量が一時間以上。と考えるとヴィズラの飼い主は往往にして真面目にトレーニングをしている人たち、と推察できる。イギリスでは多くのヴィズラは実用猟犬として飼われている。同じことはジャーマン・ポインターにも当てはまる。やはり飼い主のライフスタイルや犬に対する趣味の持ち方が運動量を決定する要素となるようだ。

一方運動をそれほど頻繁に与えられていない犬種グループは最下位がトイグループ(小型愛玩犬種グループ)、特にビション・フリーゼ、ヨークシャー・テリア、ポメラニアンは運動時間が少ない。ほとんどの飼い主が11〜30分程度しか散歩に出していない。これは明らかにイギリスのケネルクラブが推薦している犬種別運動量の基準を大きく下回っている。その次に運動量が少ないのは、テリアグループ。テリアには小型犬が多いからもっともな結果だろう。研究者たちは小型犬は都会で、ガンドッグなどスポーティな犬たちはカントリーサイドで飼われているのではないか、とも推測を出している。

ここから何が言えるのか?そう、結局誰も自分の健康目当てに犬種を選んでいない。「犬」そのものは決して人の運動量向上を約束しないのだ。本来小型犬ももっとたくさんの運動が必要なのだが、おそらく多くの人は「あまり運動を与えられない(あるいはその可能性が限られている)」という理由で小型犬種を選ぶ。そしてトレーニングに興味がある人は使役能力のある犬種を選ぶ。その結果たまたま運動量が多くなる。すなわち、まず飼い主の犬への興味(トレーニングなど)ありき。そしてライフスタイル、環境があらかじめ整わないと、人の運動量というのは容易に上がるものではないということだ。人の健康向上を犬頼みにしてはいけない。

【参考文献】

Variation in activity levels amongst dogs of different breeds: Results of a large online survey on dog owners from the UK

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