母犬の育て方も重要なことが判明、盲導犬になるために

文:尾形聡子

[photo by smerikal]

目の不自由な人の生活をサポートする犬、盲導犬。盲導犬ユーザーを目的地まで安全に導くために、盲導犬は周囲の環境に惑わされたり予想外の出来事に尻込みしたりすることなく、意思決定を行う必要があります。毎年、盲導犬としてデビューする犬が誕生しているものの、盲導犬候補犬として育成される犬のすべてが盲導犬になるわけではありません。なぜなら盲導犬としての仕事をこなせる適性を持ち合わせていない場合も多々あるからです。

盲導犬になる個体へと成長するか否か、それを分けるものは何なのでしょうか?盲導犬としての適性に影響を及ぼす要因のひとつに母犬の子育ての違いがあることが研究によって明らかにされ、『Proceedings of the National Academy of Sciences』に発表されました。

研究では、米国ニュージャージー州に本部を置く世界最古の盲導犬協会『The Seeing Eye』において行われました。研究者らは23頭の母犬(ラブラドール、ゴールデン、Gシェパード)と98頭の盲導犬候補の子犬たちを対象に、子犬が母犬のもとにいる5週間の様子をビデオ撮影して解析、その後盲導犬になるかどうかが決定されるまで(3歳までには決定されている)追跡調査を行いました。

その結果、授乳の際、母犬が座ったり立ったりして子犬が母乳を飲むには多少努力が必要なスタイルをよくとっていた場合の方が、頻繁に横になって子犬が母乳を簡単に飲めるスタイルをとっていた場合よりも訓練プログラムに成功する可能性が高いことが示されました。

また、若い候補犬(14~17か月齢)がプログラムに失敗する要因として、多段階にわたる課題を素早く解決することができない、課題をこなす最中に高レベルの忍耐力が続かない、新たな目的課題に直面するとより不安傾向を示した、といった様子が見られることが分かったそうです。

これらのことより、研究者らは母親の子犬への初期の養育行動と、子犬の認知と気質の特性の両方の微妙なバランスが、のちに盲導犬として成功するかどうかと関連していると結論しています。

今回の研究は盲導犬を対象にしていましたが、これは家庭犬についてもあてはまると言えるでしょう。母犬の養育行動の“保護”の程度、逆を言えば適度な“突き放し的行動”が子犬の成長後の問題解決能力や気質に影響してくるのです。盲導犬と家庭犬それぞれに求められる能力や気質に違いはあるとしても、物おじせずに、そして楽しんで問題解決に取り組むといった自立心を持つ犬に育つには、親の愛も“ほどほど”が大事なのかもしれませんね。そして、飼い主と犬がよりよい関係を築いていくにも、“ほどほど”が大事なことも多いのではないか、そんなふうにも感じるものです。

最後にScience制作のこの研究についてのショートビデオをどうぞ(キャプションは英語です)。


【参考サイト】

Science Daily

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