文と写真:アルシャー京子
「昨日うちの犬ったらテーブルの上のチョコを盗み食いしたのよっ!」なんて、まるでサザエさん風な笑い話として聞き流してしまいそうだが、これって実はあまり笑えない話。
チョコレートは人間にとって魅惑の甘味だが、犬にとっては大変危険な食べ物なのである。
チョコレートにはカカオ豆から取れるテオブロミンというアルカロイド物質が含まれ、この物質には血管拡張や利尿などの薬効作用があることから、一般に普及し始めた中世では(その当時のエピソードが映画『ショコラ』にうまく表現されているように)魔法の食べ物としてもてはやされた。
現在では誰でもどこでも簡単に入手できることから、やはり犬の口に入る機会も増え、一度チョコレートの甘味を知ってしまった犬では常習犯となることもある。
しかし、ヒトの体内では代謝されるため害にはならないテオブロミンという物質は、犬の体では分解酵素がなく、これを代謝できずに中毒を起こすのである。
さて犬がどのくらいの量のチョコレートを食べたら危険かというと、チョコレートに含まれるカカオの量にもよるが、小型犬でだいたい40-50g、中型犬で100-400gくらいといわれ、極度の興奮状態や消化不良という軽い症状から時には死に至ることもある(ヨーロッパでは体重1kgあたり100mgが致死量とされている)。
たとえねだられてもうっかり気軽に与えることはしない方が良い。もちろんコーヒーもカカオ製品としてチョコレート同様の危険性を持つので面白がって与えないように。
夏の味覚トマト。人間にとっては木で熟れたものが最高に美味しい。
その他の食べ物ではどうだろう?
ナスやトマトなど、ナス科の植物はアトロピンと言うアルカロイドを含み、それが痙攣や心拍障害を引き起こす。
不飽和脂肪酸を多く含むアボカドも、多食すると心筋に障害を与えることが知られている。
ブドウやレーズンも急性腎不全を引き起こすのでNG。
ブロッコリーは胃腸を刺激するし、牛乳にいたっては成犬ではそもそも乳糖不耐であるのが自然であるから無理に与えることはない食材のひとつ。
果物が美味しい季節には、桃やさくらんぼなどの種が消化不能な異物として飲み込まれるだけでなく、種の中に含まれているシアン化合物は猛毒である。
また一時はブームにまでなった甘味料のキシリトールも犬には毒であるということが分かったし、昔から言われているネギ類(ニンニクやネギなど)は溶血を起こすので避けるべきものである。そしてキャベツや大根などは腹部の膨張感が現れる。
真剣な眼差しが痛い。でもここはぐっと心を鬼にして...ごめん。
お酒?もちろんダメ。これは説明するまでもないだろう。
ここに挙げた食べ物はほんの一例であり、また障害を引き起こす量には個体差もある。
それでも昔から犬が食べてこなかった食材はなるべく与えない方が良いと言うことだと私は思う。
最後に食べ物ではないけれど、飼い主のタバコの副流煙がもたらす犬への悪影響は大きいので、愛犬家で喫煙家の方は小さなご家族にもどうぞご配慮いただきたい。
(本記事はdog actuallyにて2008年9月19日に初出したものをそのまま公開しています)
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