文:北條美紀

[Photo by Stewart Black]
セラピーの冒頭で、クライアントが「今週は何もしませんでした。だから特に話せることはありません」と言うことがよくある。私はこの言葉を聞くたびに胸が苦しくなる。私自身もつい最近、自分のセラピーの冒頭でまったく同じことをセラピストに言ったからだ。そのときの私は近況報告としてそう言ったわけではない。「セラピーの成果を何も出せなかった自分」が苦しく、懺悔するよう自虐的な気持ちになっていた。クライアントにしろ私にしろ、本当に「何もしていなかった」なんてことはないのに、だ。
散歩をしたかもしれないし、犬と一緒にぼんやりと過ごしたかもしれない。あるいは、苦しくて動けなかったのかもしれないし、時間の流れに身を任せていたのかもしれない。ただ、それらは「報告するほどの価値のあること」としてカウントされなかった。というのも、私たちは他者に説明できるような行動だけを価値があるとする社会

