キャバリアに好発する脊髄空洞症、オーストラリアでの16年間の有病率の変化

文:尾形聡子


[Image by Volker Glätsch from Pixabay]

穏やかでフレンドリーな性格、程よいサイズ感、愛らしい表情などから家庭犬として愛されているキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル。その名にあるように、イギリス王室で愛された犬でもあり、優雅で上品な雰囲気をも醸しだしています。

しかし世界中のキャバリアは、先天性、あるいは遺伝性の二つの病気が非常に高い割合で発症しています。そのひとつが「僧帽弁粘液腫様変性(MMVD)」と呼ばれる心臓病です。6〜7歳で50%ほど、11歳をすぎるとほぼ100%が発症しているというデンマークの報告があるくらい、キャバリアとして誕生した以上避けては通れない病気と言っても決して過言ではありません。なぜそのようになったのかについては、キャバリアのたどってきた繁殖の歴史が背景にあると考えられており、犬種を作出するときに何度も生じたボトルネック効果が強く影響し、遺伝的多様性を大きく喪失してしまった可能性が示唆されています(詳しくは「犬種の作出がもたらした弊害〜キャバリアにのしかかる有害な遺伝子変異」を参照)。

もはやキャバリアの健全性を確保した繁殖は不可能だと判断したノルウェーでは、キャバリアとブルドッグの繁殖を違法とする判決が2022年に下されました(藤田りか子さんの「ノルウェーのブルドッグ&キャバリア繁殖違法の判決、北欧からの反応とその実情」を参照)。一方で、そのような遺伝病が犬種内で蔓延してしまっているような犬の健全性をどのようにして回復させるか、という取り組みも行われていることは、藤田さんの「北欧発、キャバリアとフレンチ・ブルドッグを別犬種と掛け合わす、犬種改良への新たな道」をご一読ください。

犬種の健全性を高める取り組みは非常に重要なことなので、また別の機会にお話ししたいと思っていますが、今回は、キャバリアに好発するもう一つの病気である脊髄空洞症について紹介します。脊髄空洞症とはどのような病気なのか、よくセットで耳にするキアリ様奇形とはどう違うのか、オーストラリアの最新の研究を通じてキャバリアの現状がどうなっているのかについてみていきましょう。


[Image by Alexa from Pixabay]

神経系の病気、脊髄空洞症とキアリ様奇形

脊髄空洞症もキアリ様奇形も神経系の病気に分類されるものです。これらが混同されやすいのは

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