文:尾形聡子
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現在、国際家畜連盟(FCI)において、犬種は元来の使役をもとに10グループに分けて管理されています(日本のJKCはFCIに加盟)。それぞれの犬に課せられていた使役が異なるがゆえに、そして人が特定の使役を得意とする犬を好んで選択繁殖してきたために、現存する犬種はそれぞれに特有の行動特性を持つようになりました。行動だけでなく、サイズや骨格、毛質や毛色などの外見も多種多様を極めるようにもなりました。
しかし現在の犬たちの生活を見てみるとどうでしょうか。地球上に存在する犬のうち人に飼育されている犬は少数派ではあるものの、その多くは家庭犬であり、昔のようには仕事を持たない犬がほとんどで、かつて使役犬として活躍していたテリアやダックスフンドなど小型犬の多くも愛玩犬として生活を送っており、特に都会ではその傾向が顕著です。
時代の変遷に伴い多くの犬が仕事を失い、いわば失業状態にあるのですが、その一方では犬に対する人々の意識も変化してきています。犬に何か作業をして欲しいから飼うのではなく、社会情勢や家族のあり方の変化など多くの要因に影響を受けて愛玩対象として犬を飼う人が急増し、それが当たり前の風潮になっています。一昔前の日本では番犬としての役割を意図して犬を飼う家庭が多かったと思いますが、現在ではそのような立場で飼育されている犬は少数派のはずです。
このような人々の犬に対する意識の変化は、