文:藤田りか子
拡張型心筋症(DCM)は多くのケースで特定の犬種で見られる心臓病だ。心筋が異常に拡大し筋肉が薄くなるため、心臓が血液を十分に送り出せなくなる。結果として心不全を引き起こし、突然死に至ることもある深刻な疾患である。主に大型犬や超大型犬(例:ドーベルマン、グレート・デーン、ボクサー、アイリッシュ・ウルフハウンド)で発症するのはよく知られている。が、アメリカン・コッカー・スパニエルやイングリッシュ・コッカー・スパニエルなどの中型犬種の症例もよく報告されている。今回はそのイングリッシュ・コッカー・スパニエルについてのスウェーデンからの最新研究について紹介しよう。
※ 犬のDCMについては犬曰くにてこれまでの最新研究をもとにいくつか記事を出している。以下のリストを参照にされたい。
上記リンクでも紹介しているように、DCMの発症は薬物による中毒、感染症の後遺症などによることもあるのだが、多くの場合遺伝性あるいは栄養性(栄養の欠乏)によって引き起こされる。ドーベルマンやボクサーのDCMは遺伝性、そしてアメリカン・コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリーバーのDCMはL-カルチニンやタウリンなどの栄養欠乏が原因とされている。
アメリカン・コッカー・スパニエルの親戚犬種であるイングリッシュ・コッカー・スパニエル(以下E・コッカー)は、従来から遺伝性DCMにかかりやすいとされているものの、うっ血性心不全(DCMの原因ともなる疾患だ)を患っているE・コッカーの約80%がタウリン欠乏症であったことが報告されている(Basiliら 2021) 。
そこでスウェーデン農業科学大学の研究者は、カリフォルニア大学デービス校およびストックホルムの2つの動物病院の臨床獣医師たちと協力し、E・コッカーの大規模な集団における低タウリン値の発生率に関する調査を行なった。タウリン欠乏は何と関連づけられているのだろうか?
なお心疾患とタウリンおよびL-カルチニンとの関係についてはこちらの記事に詳しく記されているのでご一読を。