文:尾形聡子
[photo by DoraZett]
子犬を迎えるときのワクワク感は特別なもの。期待や喜びで胸は高鳴り心は躍る、あの高揚した感情は一度経験すれば忘れがたいものです。しかしその一方で、子犬を迎えた飼い主の多くがそれに伴う生活の変化によりストレスや心配、不安、フラストレーション、後悔などのネガティブな感情を抱くことがあります。俗に言う「パピーブルー」。産後の女性が経験する「ベイビーブルー」の感情状態と似ているところから来ている言葉です。
ベイビーブルーもパピーブルーも大きな人生の変化の後に起こることのある、うつ病や不安症に似た症状が短期間でてくる状態を指します。ただし長期間にわたりネガティブな感情状態が強く続けばベイビーブルーから産後うつと呼ばれる病気になりかねません。同様に、パピーブルーも飼い主の精神状態が悪化していけば育犬ノイローゼに発展し、絆を築くのが難しくなり、犬を手放すという最悪のケースに至る可能性も高まります。それだけでなく、犬が飼い主の不安定な精神状態に強く影響を受けながら日々を過ごすことにもなるでしょう。
ベイビーブルーや産後うつの研究は数多く行われていますが、多くの飼い主が経験すると言われるパピーブルーについての科学的な研究はこれまでほとんど行われておらず、2023年にようやくオーストラリアとイギリスからの二つの研究が発表されたという状況にあります。そこで、フィンランドのヘルシンキ大学の研究者らは、パピーブルーを客観的に評価するための質問票をつくり、信頼性について検証を行い、パピーブルーの実態に近づこうとしました。