犬の攻撃性には何が影響する?〜形態、環境、社会的要因との関係

文:尾形聡子


[Image by Simon Gatdula from Pixabay]

現代社会で人と生活を送る上で、犬の攻撃性は望ましくない行動として捉えられることが多くあります。嫌な相手との距離をとったり身を守ったりするのに必要な行動ではあるものの、度が過ぎて咬傷事故などが起こることはできる限り避けなくてはなりません。ひどく攻撃的な場合には飼育放棄につながったり、最悪、安楽死させられてしまうこともあります。

犬と飼い主との関係性に悪影響を及ぼしかねない犬の攻撃性について、なぜ攻撃行動が発生するのか理解を深めるためにさまざまな方面からの研究が行われてきました。遺伝的な要因として犬種と攻撃性との関連を調べる研究も多く、最近では2021年のヘルシンキ大学の研究を「犬種は?年齢は?人への攻撃性が高まるリスク要因」で紹介しています。その一方で、2022年にはゲノム解析から、犬種というものが特定の行動を予測するには不十分だという報告もありました。そこでは遺伝率の高い行動もあれば、そうでもない行動もあり、恐怖や不快な刺激への反応性は遺伝性が低いことが示されています。

犬曰くで何度もお伝えしてきましたが、犬が感じる恐怖や不安は攻撃行動の引き金となる可能性があります。恐怖や不安の抱きやすさは環境による影響が大きく、たとえば出自や社会化の状況などは恐怖や不安を抱きやすいビビり気質と関係してきます。それについて詳しくは藤田りか子さんの「ビビリの犬は動物ウェルフェアに関わる問題です」をご覧ください。

そのほかにもホルモンの違い、性別、不妊化手術状況、年齢、生活環境、飼い主の特徴、健康状態など、攻撃性に関わる要因は多岐にわたっています。メスよりオスの方が攻撃性が高い、年齢があがるほど攻撃性が高まる、小型犬の方が中型や大型犬よりも攻撃性が高いなどの結果は、これまでいくつかの研究において示されてきていることです。

ブラジルのサンパウロ大学の研究者らは、犬種以外の部分が犬の攻撃性に大きく関与していると考えられることから、そこに対する理解をより深め、共通認識を得るために犬の形態的、社会的、日常生活などの環境要因と攻撃性との関連を調査しました。


[Image by Alexa from Pixabay]

攻撃性の有無に関わる要因は?

研究はオンライン調査により行われ、

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