文:尾形聡子
[photo by Eric]
私たちは日々、自分の意図とは関係なく生ずる外界からの刺激を受けています。光の刺激に弱い人もいれば、騒音に敏感な人、年齢や住環境によっても刺激の受け方は異なりますが、大きな刺激が突如としてあらわれたり、気にならない程度の刺激が急に激しくなったりすれば、誰しもビックリするものです。人と同じ環境で暮らす家庭犬も同じように外界からの刺激を受けていますが、刺激の感じ方には種による違いがあります。犬はにおいだけでなく、人が思うより音量にも敏感であることが、最近の研究で示されています(2022年)。
それだけでなく、犬は人のように「これから予定されていること」を前もって知ることができません(日常に組み込まれている散歩や車でお出かけなどの場合は別ですが)。たとえば今日の夕方から近所で花火大会がある、という情報を人は前もって知り得ますし、花火を見て楽しむこともできます。しかし、犬にとって花火は突如として鳴り始める爆音であり、もし目に映れば空に瞬く摩訶不思議な閃光だと感じるかもしれません。そもそも花火の音と花火の姿とを結びつけることも不可能でしょう。つまり花火大会は犬にとって、日常生活にはない強い刺激となり、ストレスを受ける可能性が高いと考えられます。
強い地震など、人と犬の両者にとって予測不能で嫌悪的な刺激もありますが、花火大会のように人には嬉しい出来事であっても犬にはストレスにしかならないこともあります。日常生活の中でさまざまなストレスを受けているのは、その質の違いこそあれ人も犬も同じです。強いストレスを受けたときにいつまでも引きずらずに回復する力は、心理学の世界で「レジリエンス(resilience)」と呼ばれています。
レジリエンスは誰もが身につけられる精神的回復力
レジリエンスは「回復力」「柔軟性」「しなやかさ」などと訳されますが、困難な状況やストレスに直面してもそれに適応して乗り越える精神的な回復力のことをいいます。レジリエンスという概念は、大人だけでなく子どもに対しても重視されているもので、これまでにたくさんの研究が行われています。最近ではビジネスの世界においてもその重要性がうたわれているようです。
犬の研究の中では