どんな話しかけ方が効果的?犬の脳反応からわかったこと

文:尾形聡子


今、なんて言った? [Image by DaBrain from Pixabay]

犬に話しかけるとき、私たちは大人を相手に話すようにはしないものです。たいていの場合、ゆっくりと優しく、高いトーンで、さらに短い文節で区切って話しをしているのではないでしょうか。それは、まだ言語能力が未発達な人の乳児や幼児などに語りかけるときと似ていて、言語能力が発達していない相手に対し意識しなくてもあらわれる話し方であることが知られています。

そのような、人が赤ちゃんや幼児に対して使う、いわゆる「赤ちゃん言葉」は、学術的には対乳児発話(infant-directed speech)といい、母親が赤ちゃんに話しかける言葉遣いの特徴であることから「マザリーズ(motherese)」という言葉もつくられました。犬に対して使う同種の言葉遣いは対犬発話(dog-directed speech)になるのですが、赤ちゃん言葉とは完全に一致していないところもあるため、マザリーズと区別して「Doggerel」(以下、「ワンちゃん言葉」と呼ぶ)と名づけられたのは1982年に遡ります。

なぜ養育者をはじめ大人が乳幼児に対してこのような話し方をするのか、これまでにたくさんの研究が行われています。前述したように乳幼児の注意をひくだけでなく、対話の中でポジティブな感情を高めて養育者との愛着関係を促し、子どもの認知機能、社会性、言語発達にとても重要なことがわかっています。そして乳幼児の脳は大人の使う赤ちゃん言葉に敏感に反応することも知られています。

対犬発話(dog-directed speech)、いわゆる「ワンちゃん言葉」については赤ちゃん言葉と比べればそれほど多くの研究は行われていません。ですが、犬も、大人同士の会話のテンポよりも、ゆっくりと優しく高いトーンでの対話に注意を向けることがこれまでの研究で示されています(以下の記事を参考に)。

https://inuiwaku.net/10095/

https://inuiwaku.net/16820/

ただし、ワンちゃん言葉に対して犬の脳で何が起きているのかについてはわかっていません。学習によって「ワンちゃん言葉」を選択して反応するようになったのか、それとも、生得的なものであるのか

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