文:藤田りか子
[Photo by kisscsanad]
それは突然
うちの子ミミチャンが他の犬に突然襲いかかってしまった。彼女はどちらかというと人に対して恐怖を感じる犬だ。それで周りに犬がいても私はそれほど監視の目を強めておらず、すっかり気持ちを緩めていたのだ。発情期が終わってしばらくした頃だったのだが、そういう時期はアシカもかつて気分のムラを見せたことがあった。もしかしてミミチャンもそのためなのだろうか。なぜだかよくわからない。
8人のグループで成り立つガンドッグのコースをミミチャンと参加していた。私がインストラクターと話しており十分に注意を向けてないとき、そばにいたJさんのメス犬に向かって一度「ウ〜」と唸ったのには気がついていた。トレーニングセッションに入り、我々の背後にいたJさんがダミーを回収をした自分の犬を呼び戻した。そして我々の後ろをそのメス犬が通り過ぎた瞬間、ミミチャンは襲いかかった。背後でガルルル!と激しい喧嘩声が聞こえ、ミミチャンが私のそばを離れてしまったことに気がついた(私は前方ばかり見ていたのだ)。「ダメッッ!」と叫んだ瞬間、彼女はすぐにヒールポジションに戻った。おかげで相手の犬を咬むまでには至らなかったが、これは起きてはならないことであった。
Jさんは憤慨し、こちらは申し訳ないこと極まりなかった。彼女に謝りながら
「いつもはこんなこと起きないんですけど…」
と言いかけた。だがお粗末な言い訳なのでその言葉は飲み込んだ。事実、ミミチャンは他の犬に対して「ムッ」とすることはあったが(たいていは特定の犬だ)、こうやって実際に襲ったのは初めてだったのだ。
犬喧嘩の背後にあるもの
それにしてもがっかりだ。小さいときからトレーニングを積み重ねてきたのに。そして最近は何もかも順調だったのに。ノーズワーク競技会に頻繁に出ているおかげで他の犬や人を滅多なことで怖がらなくなっていたし、ガンドッグのグループトレーニングには毎週のごとく出かけていた。ミミチャンはそこで他人も他犬も全て無視。友人たちからも
「ミミチャン、クールよね、変わったわ〜」
などと言われたものだ。しかし今回何が引き金になったのか?喧嘩ムードは突然沸き起こるようだ。
ガンドッグの競技会場にて。知らない犬たちに囲まれてもクールに振る舞っていたミミチャン(中央)だったのだが…。
「なぜ、犬が突然相手に喧嘩をふっかけるのか? 喧嘩の背景にはいろいろな複雑なメカニズムがあるんですよ」
とはスウェーデンの犬行動コンサルタントの一任者でもある