ドッグトレーナーの倫理とヒエラルキー~メサイアコンプレックスの視点から

文:北條美紀


[Photo by Rikako Fujita]

ドッグトレーナーの個人情報の取扱いについて、心理臨床の現場での倫理が参考になるのではないかというお話をいただいた。「生徒の面前で他の生徒の悪口を言う」行為って倫理的にどうなの?とのことだった。トレーニングの場面で、トレーナー自身の経験をもとにいくつかの事例を統合し、一つの架空事例として改善の道筋を示すことはあるだろう。しかし、仮にそうであっても「悪口」と感じさせてしまっては失敗である。今回は、トレーナー倫理に関するご質問ではあったが、私の頭に浮かんだのはメサイアコンプレックスに見られる「指導者を頂点としたヒエラルキー構造」だったのでそちらにも触れたいと思う。

まずは心理臨床での倫理について

臨床心理士は指導者ではないが、不安や苦痛を抱えた相談者の援助をするという性質上、先生と呼ばれたり、問題解決の方法を教えてくれと言われることも多い。また、十分に注意しなければ容易に上下関係ができてしまう点でトレーナーという職業に似て

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