家畜化症候群とは何か? 家畜化症候群その1

文:尾形聡子


[photo from Adobe Stock] いわずもがな、地球上でもっとも古くに家畜化された犬の祖先は野生のオオカミである。

犬をはじめとする家畜化された動物には数々の共通した特徴があらわれてきます。その現象にチャールズ・ダーウィンが気づいたのは19世紀のこと。生物学的に無関係な動物であるにもかかわらず、家畜化されることでどの家畜動物も同じような特徴を持つように、遺伝的に変化するなんて不思議だと思いませんか?

この、家畜化に伴い起こる変化を「家畜化症候群」と言います。そもそも家畜とは、生物学的に「生殖が人の管理下にあり、野生群から遺伝的に隔離された動物」と定義されます。しかし、「家畜」と「野生動物」、あるいは「飼育された動物」と「狩猟された動物」という単純な区別をするより、「家畜化」は長い期間にわたってさまざまな段階を含む過程であるということに留意しなければならない、と「ドメスティケーションの考古学」では述べられています。

家畜化は複雑なステップを踏むものであるため、家畜化がなぜ起こるのかという理由については簡単に説明できるものではありません。そのため、長い時間をかけて進んでいく家畜化にともなって生ずる一連の共通した変化が起こる理由についても、現在もなお議論が続いています。その中でも二つの説が主流となっていますが、つい最近、オーストラリア国立大学とニュー・サウス・ウェールズ大学の二人の研究者により新たなる仮説が発表されました。

新仮説は、

【こちらは有料記事です】

続きを読むにはして下さい。

ご購読いただくと続きをご覧いただけます。

今すぐ会員登録して続きを読む