西欧諸国における犬に関するウェルフェア規制を比較

文と写真:藤田りか子


断尾が禁止されていても、ワイマラナーといった狩猟犬(その中でもガンドッグ)の断尾は許可している国もヨーロッパにはある。

スウェーデンに長年犬と住んでいる、ということで、欧米先進国における動物愛護法に関する質問を日本からよくうける。マスコミはもちろん、いつだったか日本の政府機関からも問い合わせがあった。日本の愛犬家と犬をめぐる人々にとって、関心度の高いビッグ・トピックスであるとみえる。それもそのはずで動物愛護法を討論する際は

「日本と異なり欧米では…」

なんて比較を持ち出す人も多く、「じゃ、そのエビデンスはあるんですか?」と議論は繰り広げられていく。ヨーロッパやアメリカの動物福祉や保護法の実際が気になって当然だ。

しかし欧米とかヨーロッパと一概にいっても文化(そして言葉も!)は国によってさまざまであり、故に動物に対する意識も微妙に異なる。ましてやヨーロッパとアメリカであれば、違いはさらに大きくなる。おまけにアメリカ国内だって州法というものがあり、州によって決まりごとが異なる場合も多い。

そんな状況なのでアニマル・ウェルフェアへの意識の違いも、欧米内とはいえ国によって存在する。「欧米では…」と十把一絡げに論ずることができない所以だ。スウェーデンに住んでいる私から見れば、日本で「動物愛護の国」として有名なイギリスですら、動物保護法はスウェーデンのそれに比べるとかなりゆるく感じられるものだ。

ならばどう欧米諸国内でアニマル・ウェルフェアに関する法規制が異なるのか。それに答えるべく2年前に発表されたデンマークのコペンハーゲン大学のイーブン・マイヤーとビヨン・フォルクマン教授らの論文を紹介したい。西欧諸国の犬に関する法規制について比較をしたユニークな調査である。これまで動物のウェルフェアと法規制は、実験動物や産業動物について考察されたものがほとんどだ。だが著者らによると、一般個人が所有するコンパニオンアニマルで、かつ特に犬にスポットライトを当てた比較研究というのは、これまでなされなかったという。

この調査では犬に関する保護法でも以下の点について、欧米11カ国における比較が行われた。

  • 不健全性な特徴ゆえにウェルフェアが懸念される犬種のブリーディング
  • 生殖にかかわる規制
  • 生体販売(販売をする場所、販売をする際の子犬の最低週齢、飼養保管における必須の注意事項)
  • 外科的介入(去勢、断尾、断耳、声帯除去)
  • 飼い主の日常の世話(屋内、屋外飼育環境のデザイン、犬の散歩、留守番時間、首輪の使用)
  • 殺処分(安楽死を含む)

調査対象となった国は以下の通り

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