文と写真:藤田りか子
ウクライナ情勢が影響、厳しい今年のヨーロッパの冬
冬になると電気の使用量が一気に上がる。そして今年の電気代の異常高騰。日本でも高騰していると聞いているが、ここ北欧の凄まじさ、半端ない。30%とか50%どころか100%や200%。つまり2倍とか3倍の勢いで値段が上がっている。私が住む地方はときにマイナス25〜28℃ぐらいまで気温が落ち込む。そしてそんな真冬日が厳寒の2月を待つまでもなく、すでに先週来てしまった。その日の1Kwhあたりの最高値たるや前年の6倍の値段。はぁ、どうしよう。ニュースでもこの話題で持ちきりだ。あるシングルマザーが泣きながら
「息子が、『母さん、今年のクリスマスプレゼントはシャンプーだけでいいから』って言ったんです。シャンプーだけでいいって…」
とレポーターに語った。そんなわけでチャリティ団体が子供にクリスマスプレゼントを買えない家庭のために、プレゼントになりそうなものを持ち寄り、寄付をしているという状況だ。
そしてスウェーデンでは今エアコン暖房機がバカ売れしている。そもそも夏が涼しいだけに日本のようにエアコンはあまり普及していない。エアコンはヒートポンプによって空気を温める省エネ機器。よって暖房機として北欧で突然人気がでたのだ。とあるエアコンの組み立て工場では今月新たに100人を雇用したそうだ。生産が追いつかないらしい。
とはいえ、我が家はすでに10年以上も前からエアコンを導入して暖房のときに使っている。だが今年の電気代の高騰により、それすら使わないと決心をした。そして130㎡の家を暖炉の火の温もりだけで温めることにしたのだ。多分いつか音を上げ、そのうちエアコンを起動させることになるだろう、と思いきや、これが意外にいけることがわかった。マイナス25℃の日も暖炉の火だけで過ごすことができた。しかし在宅ワークをしていなければとうてい成し遂げられなかっただろう。なにしろフル稼働。火を絶やさないよう1時間おきに薪を入れなければならないからだ。
わたし、暖炉の前で寝るの大好き!とミミチャン
犬湯たんぽ
さて、一体今日の記事はどこに犬の話題があるのか?犬の出番はここからだ。まず、犬は思いの外、暖炉の温もりが好きだったということ。暖炉の前にたいてい2頭の犬が陣取っている。まるで猫のようだ。散歩から帰ってきてメシをたらふく食べたら、すぐに火のそばにいき、そこで伸び伸びしながら寝るのだ。
そして二つ目は犬こそすばらしい暖房機として活躍してくれた、ということだ。
暖炉による暖房でほとんどの部屋は20℃ぐらいを保っている。外がマイナス20℃以下のときに薪木の力だけでこの温度を維持しているのだから、なかなかではないだろうか。もっともスウェーデンの家の断熱が優れていることにもよる。だから日本風の建築でこれをやってもうまくいかないかもしれない(何しろ窓は3重ガラス)。
ただし寝室ともなると火の場所から離れているのでちょっと寒くなる。おまけに寝ている間は薪をくべることができない。しかし、意外に寒さを感じなかったのだ。なぜだろうとと思いきや、そうそう、うちの寝室には、私とパートナーのカッレ、そして体重が25kg以上の犬3頭がところ狭しというか、ベッド狭しと寝ているからであった。いや、寒さを感じないどころか、暑くて布団を蹴飛ばしてしまうほどだ。
私とカッレだけが寝ていたら、こうまで部屋は温かくならない。すごいではないか、犬の体温による馬力ならず「犬力」暖房。こうやって昔の人も暖をとっていたのだろう、と想像してみた。この文明時代にこんな原始的な方法で暖を確保するだなんて、ちょっと面白い。それも自分の犬で!
薪で脳トレ!
犬と暖房についてはもう一つおまけがある。何しろうちの犬はラブラドール・レトリーバー。持ってこいが好きな犬たちだ。なので薪がなくなったら外に積んでいるものを持ってきてもらうこともできる。寒くて玄関からそれ以上出たくないと思ったら、アシカかミミチャンを呼ぶ。そして
「薪を持ってきて〜」
といえば、「かしこまりました!」といわんばかりに張り切って薪を積んでいる小屋へと走り出す。そして一個づつ持ってきてくれるのだ。これを5往復ぐらいしてくれれば、1時間半分の薪の量となる。そして5回の往復はアシカにとってちょうどいい。それ以上やると、飽きる。そこが人と同じ機械と違うところなのだ。
こちらに動画でその活躍を示そう。きっと「この筆者は犬をこき使っている!」なんて思わなくなるだろう。嬉しそうなアシカの表情をとくとご覧あれ。犬は何をすべきか、を理解していれば、そしてそれが犬目線で意味があるものなら、働くことを決して厭わない。それどころか喜んで作業をしてくれる。
この作業は部屋でぬくぬくしたあとのちょうどいい運動と脳トレになっている。マイナス20℃でもへいっちゃらで走って行きますぞ。