文:北條美紀
[Photo by Rebecca Scholz from Pixabay]
「愛犬へ健康なケアを提供するために」第1回の「愛着システム」、第2回の「ケアギビング・システム」を理解していただいたところで、ようやく本題に入りたい。
「Do You Suffer From Pet-Related Separation Anxiety?(ペットとの分離不安に苦しんでいませんか?)」という記事によると、人は、ペットとの分離に際して非常に一般的にPet-Related Separation Anxietyを示し、その割合たるや、とあるアンケート調査の40%、研究参加者の2/3にものぼるらしい。ここでいうSeparation Anxietyを「分離不安」だと理解すると、本当にこんなに多いの!?と驚いてしまうのだ。
人のPet-Related Separation Anxietyは「分離不安」なのか
第1回の記事に書いたように、人の心理学、特に臨床心理学を専門としている私にとっての分離不安とは、
① 分離不安:生後8カ月ぐらいから2歳ごろまで続く「発達的に適切な」不安。8カ月不安ともいう。愛着を持っている人物からの分離に関する不安
あるいは、
② 分離不安症(Separation Anxiety Disorder):米国精神医学会が『DSM-5精神疾患の診断と分類の手引き』の中に診断名の一つとして挙げている精神疾患。愛着を持っている人物からの分離に関する「発達的に不適切」で、過剰な恐怖または不安
を意味する。
私も、飼い主だって犬と離れることに困惑し苦痛を感じることは「非常に一般的」だと思う。しかし、人が感じる犬と離れるときのネガティブ感情とは、②の「発達的に不適切な」分離不安症なのだろうか(年齢的に①とは考えにくいので)。