文と写真:五十嵐廣幸
アリー、コアラのいるレイモンドアイランドまでフェリーに乗る!
犬との旅行は手間がかかる。しかし犬をいつもと違う環境や景色のところへ時々連れ出して過ごさせるのは大事なことだ。そんな経験を積ませることで、知らない土地や見慣れないものに容易にビビらなくなるようになるし、結果吠えるというような問題行動も防ぐことができる。今回は環境トレーニングを意図としたアリーとイナリを連れての旅行について記したい。
準備完了、ロードトリップ!
土曜、日曜と連日で行われるセントワーク(ノーズワーク)の競技会が地方で開催されると聞いた。これはちょうどよい機会だ。出場ついでに泊まりがけの旅行をすることにした。犬を連れて旅に出るのは楽しい。ただし、犬連れ故に準備は大変だ。まず移動中の飲み水やフードの用意をしなければならない。それらを入れるボウルも必要だ。
ただし準備は食事関係以外にもたくさんある。犬の歯磨きセット、何かと必要になるタオルやバスタオル、普段使っているサプリメント、万が一お腹が緩くなった時に備えてプロバイオティック。ウンコ袋とリード、ノーズワークで使うハーネスやロングリード、トリーツとして茹でた鳥の内臓、それを腐らせないためのクーラーボックスと氷。トリーツポーチそしてゼッケン用のホルダー。加えて私自身の荷物。これらを車に入れると車内は満載になった。その中でも一番かさばったのが、犬が寝床に使うマットである。
宿泊先であるPaynesville(ペインズヴィル)という港町は私が住むメルボルンから300キロちょっとの場所にあり、約3時間のドライブとなる。後部座席にいるアリーとイナリにシートベルトをつけて出発。3時間ぐらいだと目的地までノンストップで行けてしまう距離だ。しかし、犬たちには休憩が必要で、これを怠ると犬は車内で退屈して、吠えたり、車内を動き回ったりする。そうなると、犬がかわいそうなだけではなく、私の運転にも支障をきたす。適切な休憩をいれるのは犬の車酔いの防止にもなる。
目的地のほぼ中間地点である、Yarragonという街に車を停めて休憩、偶然見つけたペットフレンドリーのカフェに入ることにした。もちろん犬を十分に散歩させて排泄をさせてから。そうしないとテラス席でオシッコをしたり、食事を楽しんでいるお客さんの目の前でウンコをしてしまったりする可能性もある。
休憩散歩中にはノーズワークをする機会も与えた。なにしろ犬たちは車中ずっとじっとしていたのだ。退屈極まりなかったはずだ。こうしてカフェに入る前に適度な運動や脳への刺激を与えておく。店で落ちつけることがより容易になる。カフェでは私はコーヒーを楽しみ、アリーは園芸店にいるニワトリやヒヨコを見ることに夢中になった。ドライブ途中の休憩は犬たちにも良い刺激になったはずだ(こちらの動画(↓)にその様子をしめしています。ぜひ見てみてね!
犬連れOKでも、部屋が犬臭いなんてことはない
Paynesvilleには夕方に到着。今回の宿泊先はペットフレンドリーのAirbnb(=エアービーアンドビー、ネットで予約できる民泊のサービス)である。申し込みは事前にオンラインで行い、宿泊人数と犬の頭数を伝えただけ。とても簡単だ。
ペットフレンドリーと聞くと、部屋が犬くさかったり、カーペットにオシッコの跡があったりするんじゃないか?とも思ったりした。しかし、貸主さんから部屋の案内を受けて驚いた。私が靴を履いたまま部屋に入ることさえも戸惑うほど室内はとても清潔でゴージャスだったのだ。
貸主さんからの注意はただ一点。「部屋のソファーはこの部屋を利用するゲスト(犬連れとは限らない)がゆっくり過ごすためにあるものです。もしあなたの犬がソファーに乗るならば、用意されている布をソファーに被せて使って欲しい」ということだけだった。念のために庭の芝生の上で排泄についても聞いたらそれもOKであるということ。オーストラリアではペットを連れて行くときに、こういう気配りはとても大事だ。
部屋に入り、私はソファーだけでなくカーペットの上にも持参したバスタオルなどを念のために敷くことにした。粗相に関してアリーは心配はいらないが、今回は元室内トイレ派だったイナリを連れてきている。この部屋のどこかに以前滞在した犬がオシッコしていて、そこにイナリがマーキングしてしまったら・・・そう考えて、余分に持ってきたタオルなどを柱まわりの床にも敷くことにした。
そしていざ犬たちを部屋に入れる前にも、散歩をして排泄を済ませておいた。こうしておくと粗相のリスクをぐっと減らせることができる。
海辺のこんな素敵な宿で犬連れでお泊まり。幸せ感半端なし!
犬2頭を連れてのPaynesvilleの散歩は格別だった。小さい町だけど海辺でとても綺麗なところ。アリーとイナリは初めてきた場所だけににおい嗅ぎに夢中であったが、その姿を見て私はとても嬉しかった。
この町の港からはRaymond Island(レイモンドアイランド)という小さな島にフェリーで渡ることができる。島にはたくさんの野生のコアラがいるという。フェリーには犬も乗船できるということで、翌日島に渡ってみる計画を立てた。初めてのコアラを目の前にして犬たちはどのような反応をするのだろうか?とても楽しみになってきた!
規律とたくさんの刺激を与えること
散歩を終えて部屋に戻り、暫くしてから犬に食事を与えた。自宅ではいつもリビングの片隅にボウルを置いて与えている。しかし今回は部屋のカーペットを汚さないようにとベランダで食べてもらうことにした。日が沈むと肌寒いほどだったが、2頭とも寒さなど気にする時間もないぐらい、あっという間にたいらげた。
食事後はまた散歩。特にイナリは食後にすぐ排泄したがるので用心が必要だ。粗相予防作戦として、私が就寝する前はもちろんのこと、夜中と明け方にもベッドから出て、懐中電灯を持って犬を外に連れ出した。こういうとき犬に排泄コマンドが入っていると便利だ。「ウィーウィー」と言うと、犬たちはただちにおしっこをしてくれる。
その成果もあってか、宿泊中一度も粗相をすることはなかった。それどころか、2頭ともたくさんの良い刺激を受けて心地よい疲労を感じていたはずだ。夜は自分たちのマットの上でぐっすりと眠りこけた。
慣れない宿泊先では粗相をしたり家具を齧ったりするなど、落ち着きを失う犬が多いと聞く。だが、そんな犬の行動を「問題」と決めつけ、諦めてしまわないでほしいと思う。予防ケアをしておけば、みんなとてもいい子に振る舞ってくれる。粗相を避けたいのなら、犬を頻繁に外に連れ出せばよし。適度で良い刺激を定期的に与えるのがコツ。犬との過ごし方を見直してみるだけでも、愛犬のマナー度合いはぐっと上がるのは請け合いだ。
アリーとイナリは知らない部屋に泊まり、初めてフェリーに乗ったり、コアラのフンのにおいを嗅いだりもした。犬連れ旅行は、いつもより多めのケアが必要になるけれど、犬に非日常の経験を与え多くの可能性を広げてあげることができるよい機会。それをあえて実行するか否かはすべて飼い主次第だ。
次の犬との旅はどこに行こうか、オーストラリアの地図を見ながら計画中だ。ちなみに今回のセントワークの競技会は惨敗であった。
アリーとイナリを連れてフェリーに乗って島へ渡る。レイモンドアイランドには噂通り、コアラがあちこちに!
そしてこれがノーズワーク大会の様子!(↑)
文:五十嵐廣幸(いがらし ひろゆき)
オーストラリア在住ドッグライター。
メルボルンで「散歩をしながらのドッグトレーニング」を開催中。愛犬とSheep Herding ならぬDuck Herding(アヒル囲い)への挑戦を企んでいる。サザンオールスターズの大ファン。
ブログ;南半球 deシープドッグに育てるぞ
youtube;アリーちゃんねる