文:尾形聡子
[photo by Scott 97006]
散歩に欠かせない道具といえば犬に装着する首輪やハーネス、そして犬と飼い主とを繋ぐリード。今の時代、これらなくして愛犬との散歩をすることはできません。日常的に使うものだけに、愛犬にも人にも使いやすく、体に優しいものを選んでいる方が多いのではないかと思います。
けれど、どんなにいい道具を使っていようとも、問題になってくるのがリードの引っ張りです。たとえば、大型犬に思い切り引っ張られれば、体重が軽くて力の弱い女性では、たちまち引きずられてしまうことでしょう。引く力が弱い小型犬ならコントロールできるとしても、犬が人よりもかなり前を歩いてしまえば、交差点などでの出会い頭の事故につながる恐れがあります。
引っ張りのないリードウォークができることは、散歩を毎日続けるためにも非常に重要です。逆に、散歩が快適にできないがために、散歩に行く回数や時間などが減るということも考えられます。さらには、そこから運動不足に転じ、肥満やストレスによる問題行動へと発展する可能性もあります。
このように、リードの引っ張りに関連して発生するよくない出来事は、ちょっと考えてみるだけでも多岐にわたって起こり得ます。しかもリードの引っ張りは一般的に犬に見られる行動で、2021年のイギリスの報告では82%の犬に引っ張りがあり、別の報告では犬に関わる致死的ではない傷害の第一の原因として示されています。
犬と人との共生社会において、リードの引っ張りが及ぼす影響は必ずあるものの、リード引きをメインテーマとした研究は行われていないのが現状です。そこで、イギリスのエジンバラ大学の研究者らは、これまでに発表された研究から、ありふれた行動とも言える「リードの引っ張り」が犬の福祉に及ぼす潜在的なリスクを洗い出し、