文:尾形聡子
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攻撃行動は自分の身を守るために生きていく上で必要とされる行動ではあるものの、度がすぎてしまえば、犬にとっても飼い主にとっても、そこに関係してくる犬や人にとっても深刻な問題となる場合があります。
飼育放棄や安楽死の原因になりうる犬の攻撃行動は、もれなく犬や人の福祉を低下させる大きな問題として捉えられています。現状を少しでも改善すべく、特定の犬種の飼育を制限したり禁止したりする制度を設けている国があるのをご存知の方も多いことでしょう。一方では犬の攻撃行動の原因からアプローチし、攻撃性の低下に繋げられることがないかと、遺伝要因や環境要因について調べる研究が数多く行われてきています。
遺伝的な要因については、特定の遺伝子の変異と攻撃性との関連性を見出そうとする研究が代表的ですが、生理学的な観点から犬の攻撃性の違いを説明しようとした研究もあります(「ふたつのホルモンのバランスが影響~犬の攻撃性と親和性」参照)。
また、犬曰くでは、犬が感じる恐怖や不安が攻撃行動の引き金となる可能性についても折に触れてお伝えしてきました。たとえば環境要因として、子犬時代の社会化不足がもたらすビビリ気質は、将来的に攻撃性を高まらせる可能性がある大きな問題です。
健康状態の影響も考えられます。年齢を重ねて耳が遠くなったり体が思うように動かなくなってくれば、それに準じて、ちょっとしたことにも不安を覚えやすくなり、結果、攻撃的な行動が誘発される可能性が増えます。他者を自分から遠ざけようとする防衛反応として、慢性的な痛みが攻撃行動につながる場合もあるでしょう。そのほかにも、先日の藤田りか子さんの記事「咬む犬のきもち:猟欲 vs 恐怖による攻撃行動、その感情の違いについて」では、犬の狩猟欲求に基づいた攻撃行動について丁寧に説明してくれています。
このように攻撃行動にはさまざまな原因が考えられているのですが、ヘルシンキ大学の研究者らは、あらためて、犬の攻撃行動と犬種や年齢、生活環境などとの関連性を調べる大規模調査