文:尾形聡子
[photo by Michael Sandoval]
犬はさまざまな姿かたちを持つ生物です。犬種によっておおきく異なる外見は、遺伝子の突然変異によって引き起こされた見た目の変化に人が注目し、それを選択、繁殖してきた結果といえるでしょう。そうでなければ、犬の祖先であるオオカミとこんなにも違った形態を持つことは不可能です。
犬種の特徴をあらわすもののひとつ、尻尾の形。巻き尾や鎌尾、立ち尾、垂れ尾、飾り尾、リス尾、ラットテール、オッターテール、ボブテール・・・などなど尻尾ひとつとってもさまざまな形状があります。その中に、ブルドッグやフレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリアに見られるスクリューテールと呼ばれる、コルクの栓抜きのようにくるりとらせん状になっている短い尻尾があります。この、スクリューテールをつくり出している原因となる遺伝子変異をアメリカのカリフォルニア大学デイビス校(UCデイビス)の研究者らが発見し、その結果を『PLOS Genetics』に発表しました。
スクリューテールと脊椎異常はDVL2遺伝子の変異が原因
ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリアの共通項はなんといっても短頭種であること。丸い頭、短いマズル、離れた目は短頭種としての特徴ですが、短頭種の中でもこの3犬種には脊椎の異常やスクリューテールであるというさらなる共通した特徴がみられます。スクリューテールも脊椎の形成異常であり、8~15個の尾椎を欠如していることが大きな原因とされています。また、ちょっと専門的になりますが半椎(hemivertebrae)楔状椎(wedge vertebrae)、蝶形椎(butterfly vertebrae)といったさまざまな脊椎の奇形や脊椎融合がみられることも多々あります。