文:尾形聡子
[photo by Emery Way]
みなさんの愛犬は日々、どのような運動をどのくらいしていますか?
藤田りか子さんが『犬種別に見た愛犬運動量の統計結果』で紹介されていましたように、犬種によって愛犬に与える運動量が異なる傾向にあるのは、ある程度予測のつく結果と感じられたのではないかと思います。これはイギリスで行われた調査ではありますが、チワワの飼い主の4%が散歩ゼロといったように小型犬の散歩が軽視されがちなのは、世界的にみられる小型犬の飼育頭数の増加とともに生じている状況かもしれません。
犬種による差のみならず、年齢によっても、病気があるかないかによっても、そして気候にも運動量は影響を受けるでしょう。そして、年齢や病気、気候については飼い主自身においても影響を受ける要因となります。
犬にどのくらいの運動を与えるのが適切であるか、エビデンスがない現状
たとえば、若いボーダー・コリーと老齢のシーズーとでは単純に比較することはできません。2時間歩いて肉体的には充足したとしても、はたして精神的にも足りているものでしょうか。インターネット上で検索をすれば、“犬種に見当った適切な運動量”として推奨する散歩時間が記載されているサイトがいくらでも出てきます。しかし、その科学的根拠はどこにあるのでしょう?
それぞれの犬の活動レベルの科学的根拠を導き出すには犬種、年齢、性別、健康状態などの影響を加味しなくてはなりません。また、世界的にみられる異常気象がそれぞれ通常の気象時に比べて犬の活動量にどの程度影響を及ぼす可能性があるかについても未知の世界です。健康体のパワー溢れる青年期の犬でさえ、今年の日本の酷暑はとりわけ厳しいと感じていたはずです。暑すぎる気温や高い湿度は少なからず犬の活動レベルを下げ、運動量の低下も招きます。
犬の活動レベルの科学的根拠を得るためには“世界的大規模調査が必要”と考えたイギリスのノッティンガム・トレント大学の獣医学部博士課程の学生Emily Hallさん。犬の熱中症の危険因子と環境条件が与える犬の活動量への影響について研究する彼女は指導教官らとともに、世界中の犬の飼い主に向けてオンライン調査を開始しました。
[photo by Jonas Löwgren]
日本からも参加してみよう
調査は以下リンク先より参加いただけます(2018年12月31日まで)。複数の犬について回答する場合は、一頭ずつ調査を進め、終了したら次は別の犬、というように繰り返す形になります。質問はすべて英語ですが、主に質問に対して5段階のいずれのレベルであるかを選択していく方式です。ネット上で利用できるフリーの翻訳アプリを駆使して進めば、それほど苦労せずにアンケートを終了させることができます。
年齢、性別、犬種、持病の有無、肥満度など一般的な質問から始まり、通常の1日の運動量、どんなタイプの運動をどんな頻度で行っているか、冬場の雨や雪、夏場の気温や湿度がどの程度通常の活動レベルに影響をしているか、運動中のトラブル(たとえば呼吸困難など)はどの季節に見られるかなどの質問が続きます。必要に応じて文章で記入する欄もありますが、フリーの翻訳機能を頼って対応してみてください。
英語が苦手な方には荷が重いと感じてしまうかもしれませんが、是非日本からも多くの人が参加できればと思っています。そうすることで、そのデータは世界的に見てより信ぴょう性の高いものとなるからです。
また、主導研究者であるEmily Hallさんはこれまでに行われた犬の飼育が高齢者などの人の健康に与える影響についての調査に疑問を投げかけています。2017年に発表されたグラスゴー・カレドニアン大学の研究では高齢者が犬を飼育するとより歩くようになるという結果が示されています。しかしその研究では、活動的な犬を飼育している人を研究対象から除外しているのみならず、そもそも犬の活動レベルの根拠が示されていない上で行われたものでもあるためです。
まさにこの部分は、『健康になるという理由だけで犬を飼うなかれ』での藤田さんの指摘と通ずる面があると感じます。どのような犬を迎えてもすべての人が以前よりも歩くようになり、もれなく健康になれるとは限りませんし、犬が好きで犬と一緒に散歩をしたいと思っていても、誰もが迎えた犬に適切な運動量を与えられるとも限りません。このような点からも、犬の活動レベルについての科学的根拠を得るための調査は意義のあるものと感じます。
さらに、このオンライン調査による研究を通じて、新たに犬を迎えるときに自分のライフスタイルにあう犬を選び、適切な運動量を与え、増えている犬の肥満を減らしていくためにも役立てていくことができるとEmily Hallさんは考えているようです。
[photo by David Merrett]
もちろんのこと、私も早速アンケートに回答しました。どのような国からどれくらいの参加者がいて、どんな結果がでてくるのか、研究が発表されるのをとても待ち遠しく思います。参加人数が増えれば増えるほど、犬たちへの理解がより本質的なものへとつながっていくはずです!是非ご参加あれ!!
【参考サイト】
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