文と写真:尾形聡子
散歩をしていているとよく、”ウチの子は大丈夫”という言葉を聞く。
最近ようやく慣れてはきたものの、当初はかなり戸惑ったものだ。出会う場所や状況によって、その言葉はいろんな解釈ができる。たとえば散歩中、すれ違うのもギリギリの細い裏路地で相手の犬が伏せて待ってしまっている場合などは困ることが多い。そんなとき、
“ウチの子は大丈夫(挨拶したがっているのだけれど・・・)”
と言われることがある。タロハナがその犬に興味がないばかりか、伏せている犬にあえて近づきたがらず、むしろ嫌がっている様子を見せることもある。すると、
“ウチの子は大丈夫(なのに。どんな犬にもすごく友好的な子だから。でも、そちらの犬がねえ・・・残念ねえ・・・)”
というような心の声が聞こえてきそうなこともしばしばだ。
犬同士がトラブルになるのを避けるためにさっと踵を返して別の方向に進んでいくこともできるが、人同士の付き合い的な意味で考えれば相手にいい印象を与えないかもしれない。大丈夫と言われているのに避けて通るのも気が引けるところがある。いずれにせよ、二つ目の”ウチの子” のようなニュアンスに、私は随分とショックを受けてきたものだ。言い方は悪いが、ある意味、自分(と犬)を正当化し、相手(とその犬)を先手で批判しているとも受けとれてしまうからだ。犬を含めた人同士のコミュニケーションとして、“ウチの子は大丈夫”は考えさせられる言葉であると思い続けてきた。