犬の爪切りは装蹄師スタイルで解決!

文と写真:藤田りか子

今度こそ、爪切りがうまくいった!それも装蹄師のスタイルからヒントを得た。

前回からの続きである。

ラッコの長く伸びた黒い爪を見ながら恨めしく思った。ちょっとここに挟みさえ入れさせてもらえれば!そのちょっとが、どの手段を取ってもうまくいかない。最後、爪切りで挟む瞬間にして、ラッコはパニックを起こし、ドタバタと逃げて行ってしまう。最終手段のメスの尿でも完敗。

困った、困ったをしばらく繰り返していたのだが、ふと自分が馬を世話している時のことを思い出した。我が家では以前、ナチュラルホースマンシップの真似事をやっており、馬に蹄鉄をつけずに、その代わり強い蹄を作ろうとした。しかしそれにはきちんと蹄の形を整えなければならず、ひたすらヤスリで削ったものだ。そう装蹄師が使う大きな鉄ヤスリ。犬もあの方法でいこうではないか!鉄ヤスリでせっせと犬の爪を削るだなんて聞いたことがなく、ちょっと馬鹿げているようにも思えたが、他に手段はない。

これがホームセンターで仕入れてきた鉄ヤスリ。

鉄ヤスリだけでは爪に優しくない、と思う人は鉄ヤスリに紙ヤスリを貼り付けるのをおすすめ。サンドベルトという長い紙やすりを購入。テープで巻きつける(写真参照)。

ラッコは足を握られるのだけは、さすがにこの時点で慣れていた(半年近くかけて慣らしていた成果)。なのでこれからのシェーピングは、爪にヤスリを当てるというトレーニングであった。ヤスリはホームセンターに行って日曜大工用の鉄ヤスリを買ってきた。しかし、摩滅力が弱かったので、その上にかなり粗めの紙やすりを巻きつけた。これは爪切りとは全く違うものなので、たとえ爪先にヤスリが当たってもラッコは一瞬ビクッとするものの、すぐに慣れた。最初は力を入れずに爪にただ軽く当てるだけ。それに慣れたら、少し擦るふりをしては止める。これを繰り返しトレーニングを続けた。

ここで肝心なことは、足を自由にしてあげる瞬間というのは、まだ彼の足が私の掌中にある時。自ら足を外そうとした瞬間に、放してしまってはダメだ。なんといっても、このトレーニングでは私の手から離れて自由になること自体がご褒美なのだから。じっとしていたことに対する報酬だ。

コツとしては犬が放そうとする素振りを見せる前に、自由にしてあげる。最初はたった一本の爪、そのうちに2本、3本と少しづつ時間を延ばしてヤスリ作業を継続。時々タイミングを逃して、ラッコの方から私の手を振りほどき逃げようとしたこともあった。しかし、その時に「ウ~っ!」と私は犬みたいに唸って彼が一瞬でも動きを止めるまで足を離さなかった。この点はすごく大事だと思う。褒めるを主体のトレーニングをやっていると、絶対に怒っちゃいけない、という固定観念に捉えられがちだが、10回に1度か2度怒るぐらいならかえってこちらの方が効果がある。というか、少なくともラッコと私の間では、その法則は成り立つのだ。

犬の顔に背を向けて立つ。そして脚を後方に伸ばしながら、足先をつかんでヤスリを当てる。馬の蹄のケアをするときと同じスタイル。こうすると犬の神経はそれほど脚に集中しなくてすむようだ。

もう一つのポイントは、ラッコの爪に鉄ヤスリを当てる際には馬の蹄をケアするときのように立たせたままで行ったという点(写真上参照)。立たせたままの方が犬の神経があまり足にいかない、ということも分かった。だから余計にリラックスしてもらえた。当初はそれこそ毎回立ったままヤスリ作業をしていたが、最近はすっかり慣れて、ベッドの上で寝転がりながらやれるようにもなった。その間、ラッコは目を閉じて寝ているほどなのだ。

確かに一本一本の爪をシャカシャカと削るのは、爪切りに比べると効率は悪い。でも毎回少しづつ頻繁に削っていれば、そんなに大した労働でもない。それに18本の爪(ラッコには後ろ脚の狼爪はない)を一気に削ることもない。実は、犬の爪を削ってネイルケアをするという発想は新しくない。電動で犬の爪を摩滅させる機器も売られていると後で知った。しかし、ヤスリが電動でグルグルと素早く回転する、という点が私には苦手に思えた。爪切りと同じ、うっかり削り過ぎれば、摩擦熱で犬が悲鳴を上げてしまうかも。やっぱり不器用な私にはマニュアルがよし、と。それに今となってはごろりと横になる犬のそばで爪をせっせと削ってケアするのも、なんとなく楽しくも思えるのである。

(本記事はdog actuallyにて2016年7月20日に初出したものを一部修正して公開しています)

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