爪切り、大嫌い!

文と写真:藤田りか子

爪切りが大嫌いな犬は少なくない。たとえ小さい時から慣らされていても、嫌いなものは嫌い、と絶対に慣れない犬もいる。さて、爪切り嫌いな犬と暮らしているみなさんはどう対処しているかな?

私は絶対に歯医者になれる口ではない。不器用極まりなく、ミシンですら扱えず真っ直ぐに縫うことができない。ゆえに歯を削るあの摩滅マシーンなどを握らされた日には….。うっかり患者の舌を削ってしまうのに違いない。考えただけでも失神しそうだ。不器用とは困ったことで、犬の爪を切る、という単純なケアですら上手にできず、そのために今まで飼った犬たちをどんなに怖がらせてしまったことだろう。老眼になって一層、難しくなった。ただし、歴代の犬たちは、それでも、気を取り直して、爪切りに付き合ってくれた。

ただし今の愛犬、ラッコは最後まで抵抗をし続けた。日本のようにトリミングサロンがあちこちにないスウェーデンにおいては、獣医さんが一回につき1000円ぐらいで爪切りサービスを提供している。ちょっと恥とは感じたものの、そこでそのお世話になることにした。最初はおとなしくしていて、爪を切らせる態勢であった。しかし、爪切りのパチンという音を聞いた(というか振動を感じた)瞬間、思い出したかのように突然パニックを起こした。その後はマズルをつけられ、かわいそうに、恐怖感の中で爪切りは行われた…。それが痛手で、二度と足を触る人を信用しなくなった。かといって爪を切らないわけにはいかない。夏はよし。特にアスファルトを散歩すれば爪は摩滅してゆく。しかし冬になりどこもかしこも雪に覆われると無理だ。除雪された道路を歩いても、雪や氷が表面を覆い、ヤスリとしては荒さに欠ける。

これではいかんと、忍耐力あるのみ、クリッカーで爪切りを怖がらせないトレーニングを始めた。動物園の野生動物はこうして獣医のケアを受けるトレーニングを受けている。野生動物でできるのだから、家畜の犬にできないはずはない。爪切りを匂わせて、クリック。爪切りを前足の近くまで持ってきてクリック。トレーニングにはバリエーションをつけて、というではないか。だからクリッカーのみならず、爪切りでジャレさせるなど、とにかく爪切りの存在に慣らそうとした。普段ベッドに一緒に寝ているのだが、その時もベッドの横に爪切りを置いておいて、いつでも一緒に爪切りで戯れる用意もしていた。じゃれながら、足に触れて、鈍化させてしまおう、というのが狙いだ。でもいざ、爪切りが爪をわずかに挟み出すと、やっぱり突然、気がついたように、パニックを起こし出す。もしかして私のクリッカーのトレーニング技術が至らないのかもしれない。

爪切りを怖がる犬は、スウェーデンでも珍しくない。「子犬の時から体を触りまくって人に触れられることに馴らさせましょう」とはいうが、それを実行していても、思春期を迎えた頃(7ヶ月から1歳ぐらいの間)から、どうしても、爪切りだけは許せない、という犬も出てくる。こちらには爪切り専用のトレーニング教室もあるほどだ。そこでは私が前述したように、大抵クリッカーで慣らしていく方法を使う。

ラッコはクリッカーですらうまくいかなかったのだ。こうなったら、使えるものは何でも使う!メス犬の尿の臭いをご褒美にどうだ!と、雌犬を飼っている友人宅に行って、尿を脱脂綿に染み込ませてきた。ラッコは、筋金入りの、「オスオス」しい犬。インストラクターにも言われたのだが、「テストステロンが多すぎる」らしい。これぞ最高のご褒美となるはずだ。そして、その麗しきメスの尿のニオイを嗅がしながら慣らしていった。だが、爪切りが爪を挟んだ途端に…。

さて、私がその次に取った手段とは….?

この続きは次回までのお楽しみ!

(本記事はdog actuallyにて2016年7月6日に初出したものを一部修正して公開しています)

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