愛犬はあなたの「ウソ」と「ホント」を区別している

文:尾形聡子


[photo by Roger Ahlbrand

長い間、他者の気持ちを推し量ったり理解したりする能力である「心の理論」は人においてのみ発達するものと考えられていました。しかし近年、人以外の霊長類にも心の理論があるかどうかを証明するべく研究が行われ、チンパンジーやオラウータンなど大型の霊長類には部分的に心の理論があるのではないかと考えられています。もれなく犬においても、社会的認知能力を持つことを示唆する数々の研究が行われ、情動伝染(あくびがうつるなど)があることは示されているものの、心の理論を持つかどうかまでは明確な答えは出ていません。

当然のことながら、心の理論は生まれたての赤ちゃんには備わっておらず、成長とともに少しずつ社会的認知能力を発達させていきながら4〜5歳のころに獲得すると言われています。心の理論の有無を判断するには「他者がその知識に基づいて真であったり、偽であったりする志向や信念を持つことを理解する能力、すなわち誤信念を理解することが必要」であるとされ、そこから「誤信念課題(False belief task)」と呼ばれるテストが誕生しました。以下の「サリーとアン課題」はそのひとつです。

「サリーとアン課題」ウィキペディア「心の理論」より抜粋

    1. サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいる。
    2. サリーはボールを、かごの中に入れて部屋を出て行く。
    3. サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移す。
    4. サリーが部屋に戻ってくる。

上記の場面を被験者に示し、「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すか?」と被験者に質問する。正解は「かごの中」だが、心の理論の発達が遅れている場合は、「箱」と答える。

一部の霊長類と犬において、他者の視線追従をする能力(人では心の理論を発達させる過程に獲得する)があることはいくつかの研究で示されてきたものの、この「誤信念」に対する人以外の動物における理解についてはほとんどわかっていません。そこで、ウィーン大学の研究者らは犬に「誤信念」を理解する能力があるのかどうかを調べる実験を行いました。

Proceedings of the Royal Society B』に発表された研究によれば、犬は心の理論をまだ持たない幼児とは異なる興味深い行動を取ることが明らかになったのです。

テスト方法

誤信念課題の中の上の例で示した「位置移動課題」に基づいて、犬用にアレンジした実験が行われました。ふたつの

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