一緒に幸せを感じられる散歩は、かけがえのない宝物

文と写真:尾形聡子

「動物に正月は関係ねーもんな」

年明け2日の朝。散歩先の墓地の公園にいる猫おじさんたちの一人が言った。

いわゆる野良猫へのエサやりさんではなく、ラジオ体操帰りというわけでもない。おじさんたちは、どこからともなく墓場に集まってくる3匹の猫たちと一緒にのんびり談話をしている。悪天候ではない限り、いつもいる。いつしかおじさんたちと私は挨拶を交わす仲となった。

「あらら、冬なのにずいぶん毛を刈っちゃったんだね」

「あっという間に伸びてくるから意外と大丈夫なんですよ」

普段はこんな会話を交わす程度だ。朝日を浴びながらおじさんたちの脇でゆったりとくつろぐ猫たちの姿を見ると心が和むものだ。

おじさんにかけられた冒頭のことばには、「猫たちには正月は関係ない、だから俺たちもこうやって1月2日の朝からここにやってきているんだよ。犬たちも同じだよな、正月だからって散歩しないわけにはいかんだろ」という意味合いがきっと含まれていただろう。「年中無休だからな」とも言った。

それは年末年始で話題になった24時間営業を行う店を揶揄するかのようでもあったが、動物には人のような休みがないことを率直に言っただけなのだとも思う。けれど、あらためてその通りだと感じた。

犬にとっての散歩はまさに年中無休であり、毎日の大切なルーティンでもある。それを素直に口にしたおじさんのように思っている犬の飼い主ははたしてどれだけいるだろうか。頭で考えて理解するというような小難しいことではなく、肌で感じとる部分があるのかもしれない。何をするわけでもなく猫とおじさんたちが毎朝公園に集合するのは、猫にとってそれが日常の幸せであり、おじさんたちの幸せでもあるからなのだろう。そして、タロハナにとっては楽しい散歩が毎日の幸せであり、私にとっても犬たちが楽しそうに散歩をしている様子を見られるのがかけがえのない幸せになっている。

去年の夏あたりから体調を大きく崩したタロウとの生活を通じて、より一層そう強く感じるようになった。

体調・体力的に制約が出てきたタロウが、どうしたら毎日楽しく過ごせるだろうかアレコレ試し、様子を観察してきた。9月末の手術後には歩くのがやっとのときもあったし、お漏らしもしばしば。食欲がガクンと落ちてしまったこともあった。墓地に行くためにドッグカートに乗る練習もした。

けれど、少し体調が上向いたときにはやっぱり自分の足での散歩。まず「僕はまだ自分の意思で歩ける」という自信を取り戻せる。そして、オスだから尚更なのかもしれないが、「自分で排泄をコントロールする」ことでも自信も取り戻せる。上げられなくなっていた片足を再び上げられるようにもなった。これについては脚力というより気力によるところが大きいと感じている。オス犬にとって、精神的にもきっと大きな意味があるにちがいない。

しかし本人がやりたいようにしているだけでは一緒に歩いている意味が薄れてしまう。時間が短くても楽しい散歩にするには、いつも一緒に歩いている私がタロウの散歩モチベーションをいかにして上げるか、に尽きると思った。たとえばちょっと足取りがいい瞬間があれば、それに合わせて声がけするだけでいい。そうすると、いつもより足取りのいい時間が長くなることがあるのに気づいた。また、普段は同じ方向を向いて歩いているけれど、たまに私が後ろ向きに歩いてみてもいい。ちょっとした刺激になるものだ。こんな些細なことだけでも散歩への熱意は変化してくるものだ。

スパニッシュ・ウォーター・ドッグという作業犬ならではの気質によるところも大きいかもしれないが、犬にだってやはりプライドがある。タロウがそれを教えてくれた。そのためにも小さいころからの散歩は大事で、飼い主と一緒に散歩を楽しめるものでなければ、せっかく散歩をしてもその意味はもしかしたら半減してしまうかもしれないとも。たとえば最近よく見かけるスマホ片手の散歩からはお互い何が得られるのだろうかと思ってしまう。

飼い主に撫でられ家でくつろぐ時間も必要だ。けれど老いた犬のQOL(生活の質)をよりよくするためには、その一つの手段として、お互いに楽しいと感じられる散歩をし続けることの大切さを、いま、身をもって感じているところだ。

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