文:尾形聡子
[photo by Micolo J]
日々の散歩は犬と飼い主が組となって作りだされる大切な時間です。犬もそれぞれなら人もそれぞれ、年齢や環境などによっても散歩の仕方は千差万別だと思いますが、どのような形であれ犬と暮らすならば散歩は切っても切れない毎日のイベントであることに違いはありません。イギリスのリーズ・ベケット大学とマンチェスター・メトロポリタン大学の研究者らは、散歩が人と犬の関係をどのようにつくっていくのかを調べるためにインタビュー調査を行い、その結果を『Social & Cultural Geography』に発表しました。
2人の研究者らはイングランド北部に暮らす、28歳から66歳までの12人に対してデプスインタビュー(面談調査の一種。対象者からより深掘りした情報を得ようとするインタビュー形式)を実施しました。参加者たちの犬の個性、彼らにとって犬がいることの意味、どのように犬と関係性を作り上げ、かかわりあってきたかなど幅広い質問が含まれていました。さらに、研究者らは、散歩することの意味、彼らの生活のなかで散歩はどのような位置を占めてきたか、どのような経験をし、犬と自分との関係性をどのように理解しようとしたか、などについても熟考するよう参加者に依頼しました。
インタビューによって得られた回答から、参加者たちは犬と深い部分で感情的な絆があると感じ、犬たちが元気に健康でいられるようにする責任を強く持っていることが、散歩をする理由の大きな一部となっていたそうです。さらに興味深いのは、責任感からよりもむしろ、犬が散歩に出かけることで犬自身が楽しんだり、より”犬らしい(dog-like)”ことができると思っていることが、人々の犬との散歩へのモチベーションになっていたことが明らかにされたことです。
そして、散歩はただ犬と一緒に歩いているだけではなく、歩く犬に対して歩く以外の何かをしていると感じている、犬は好き嫌いなど独自の個性を持っている、と各人が回答していたそうです。参加者のほとんどが、散歩に出かけるタイミングや時間の長さ、散歩の場所などについて犬の個性を見て決めていたそうです。そのことは、散歩でほかの歩行者などと積極的に関わることを避けたり、なるべく社会的な交流が起こらないようなルートを選択するようにしているといった状況を選択する場合にもあらわれていました。
[photo by Paolo Fefe’]
イギリスの限られた小さな地域での調査ではあるものの、参加者は犬と人の間に作られる関係性の力に本当によく気づいていて、散歩を「犬が必要としていることを聞き、犬がもっとも犬らしくいられるまたとない機会」としてとらえていたこと、そして、「散歩の時間は人から一方的に力を押し付けているのではなく、人と犬の双方がその関係性の中で意識的に折り合いをつけているものである」ということが示されたと研究者らはいっています。さらには、飼い主は「犬が犬らしく振る舞うのを見ることも好き」と答えていた点も重要だと指摘しています。
研究が行われたイギリスでは家庭の40%において犬が飼育され、850万頭の犬が暮らし、平均で1週間に8時間54分(1日平均にするとおよそ1時間16分)、36マイル(57.94km)の散歩をしているという調査結果が公表されています。
みなさんにとって、愛犬との散歩はどのような意味を持つものですか?
(本記事はdog actuallyにて2017年3月16日に初出したものを一部修正して公開しています)
【関連記事】
【参考サイト】
・Manchester Metropolitan University News & Events
・Leeds Beckett University News