文:尾形聡子
[photo by LuAnn Snawder Photography]
不妊化手術は日本の家庭犬においては慣習ともなっていますが、主な目的は犬の個体数管理にあります。望まれない犬を増やすことのないよう、ひいては殺処分される運命の犬が誕生しないよう、すなわちそれが犬の福祉の向上につながると考えられてのことです。
オスメスともに不妊化手術は確かに予定外の個体数増加を抑制することはできるでしょう。さらに先日、不妊化手術と病気の関係について調べた研究を紹介しましたように、特定の病気においてはその発症リスクを低下させることも示されています。
しかし現状を見るに、それは本当に犬のためになっているのか?という疑問が湧き出てくるものです。その疑問については、五十嵐廣幸さんの「どうして自分で決められないんだ ー愛犬避妊去勢事情ー」や、藤田りか子さんの「アメリカの家庭犬不妊去勢の風潮を嘆く- 便利なペット文化に警鐘を鳴らす」に述べられている通りなので是非ともそちらをご一読していただくとして、今回は早期不妊化手術が犬の行動にもたらす影響について調べた二つの研究を紹介したいと思います。いずれも、オーストラリアのシドニー大学の研究者とペンシルベニア大学のジェームス・サーペル教授が開発したC-BARQ(犬の行動解析システム)を利用しての共同研究です。
たとえばオス犬ならではのホルモンに起因すると考えられている「攻撃性」を手術により低下させることができるというようなケース。オス犬の強い攻撃性に手を焼いて手術に踏み切るというような話は、