幼児がいる家庭、犬を迎えてもいいと思う?

文と写真:藤田りか子

【Illustration by Carmera Alvarado

小さな子供がいる家庭に子犬を売ることを躊躇する、あるいは拒否するブリーダーは、スウェーデン(筆者の住む国)では決して少なくない。その一番の理由は、子供が小さいと親が世話にかかりっきりになり、子犬のしつけや世話がおろそかになるから。さらに幼児と子犬は必ずしもうまく折り合えるわけではないから。もちろんいっしょに生活を共にしながら成長をする、というのはお互いにとってもそして親にとっても多くを学べる素晴らしい機会ではある。が、それには大人の監視が常に必要だ。さもないと悲劇にもなりかねない(犬が幼児を咬むなど)。事実、私自身も乳児がいる人には、犬飼いをあまりススメない派でもある。

しかし例外もある。ここにお話するのは、小さな子供がいるにもかかわらず敢えて犬を迎え入れたスウェーデンのお母さんたちのケースだ。いずれも上手に犬&子供と暮らしている。どのように彼らが時間をやりくりしているのか、みなさんも参考にされたい。

Oさんの場合

2頭の柴と暮らすOさんはアジリティ競技にのめり込む情熱のコンペティター。トレーニングに励みながら、赤ちゃんを身ごもり出産。半年の産休はとったが、赤ちゃんがいるからといって、決して犬のトレーニングを休むことはなかった。時には赤ちゃんを旦那さんや実家のお母さんにみてもらい、定期的にアジリティのフィールドに通った。子供が2歳になってからは一緒にトレーニング場に連れてゆくことに。アジリティのトレーニングを頑張るかたわら、そこで子供に犬と触れ合う機会を与えている。Oさんはこの生活にとことん満足。犬たちもまったく問題はないという。仕事場に行くときは犬連れ。フルタイム勤務なので、子供はその間保育園へ。

Oさんのお母さんがアジリティを練習するかたわら、子供はアジリティ場で走ったり、犬をトレーニングしたりと、お母さんの趣味を一緒に楽しんでいた。

Sさんの場合

Sさんはロットワイラーの若犬(8ヶ月齢)と暮らしながら長男を出産。お腹に赤ちゃんがいる間も、森にでかけては若犬の散歩。のみならず嗅覚の遊びなどアクティビティを絶えず与え、若犬のエネルギーを発散させていた。出産後も赤ちゃんを連れながら、犬のトレーニング・クラブへ。時にはクラブのトレーニング仲間が赤ちゃんを見てくれることも。仲間の存在はSさんにとって大きな助けになったそうだ。2番目の男の子が生まれたとき、そのロットワイラーは5歳に。その頃までに「子供と犬」の経験を十分つんだSさんは、長男、次男の二人を伴い、ありとあらゆる場所に出かけ自分の犬のトレーニングに付き合わせた。子供達もお母さんがいろいろな場所に犬と行く、ということを一つの「お出かけ」と捉え、とても楽しんでいたという。こうして、母、子供、犬、の絆を深めることができたそうだ。その後、最初の犬が亡くなり、子犬がやってくることに。その頃、子供たちは5歳と10歳。子犬のトレーニングは主に庭で。そうしながら、子供達をまわりで遊ばせていた。Sさんは、子供と犬のために時間がとれるように、ハーフタイムで働いている。時には自宅で仕事を行うこともある。

【Photo by Stig Berge

Eさんの場合

Eさんのお勤めは週に2回の夜勤。子供は3歳と6歳。犬はゴールデン・レトリーバーの成犬と3ヶ月のパピー。子供の面倒を見ながらの犬の世話なので、犬のアクティビティはどうしても短かめになってしまうそうだ。しかし、数十分でもいいから犬を外に連れ出し、そしてそれを1日に度々行うことで、犬の運動ニーズを満たしてあげていた。週に一度はワーキングドッグ・クラブのトレーニング場に。その際は子供も一緒。乳児の時はベビーカーで子供を連れて行った。長女には時にトレーニングを手伝ってもらうことも(ただしあまり当てにならなかったとも!時々犬へのご褒美に使うボールがなくなっていることもあった。みれば向こうで長女がそのボールで遊んでいたそうだ)。少し子供が大きくなったので、最近では自分の趣味を優先させる日、子供にすべての時間を捧げる日、というのを1日交代で設けているそうだ。もちろんEさんがトレーニングに出かけている間は夫が子供たちの面倒を。

【Photo by Franco Vannini

以上のお母さんと子供、愛犬のサクセス・ストーリーにはいずれも共通点がある。まず、どのお母さんも犬のアクティビティ/トレーニングを欠かさない非常な真面目な飼い主であるということ。つまり犬のニーズを満足させるよう絶えず切磋琢磨している。そこには当然犬とのコミュニケーションも生まれ、ハーモニックな共存が可能となっている。さらに彼らは子供の世話が大変、ということを言い訳にしない。子供か犬か、という二者択一にせずみんなで一緒に行動。むしろこれを子供と犬の社会化のチャンスと捉えている。そんな風にして犬を含めた家族がより絆を深めている点に注目したい。そしてこれらお母さんたちは、周りからの理解やサポートを得られていたという幸運に恵まれていた。

幼児を育てながら犬を迎えることができるか否か、というのはひとえに飼い主次第。そして周りからのサポートがあるかないかにかかっているだろう。そしてこの例からも分かる通り、多くは経験のある飼い主であり、犬との付き合い方を熟知している人だ。

…となると、やはり周りからのサポートに乏しい人、犬について初心者の人は、幼児と子犬を同時に家族として迎える、という選択は避けた方が賢明とも言えるのだ。