コールド・テール症候群とその予防と対策

文と写真 藤田りか子我々家族だけが知っている秘密の湖畔というものがある。アクセスが少々難しいので、私たち以外にはおそらく地主ぐらいしかそこを知らないだろう。夏の夕暮れなど、貸切状態の湖畔に犬たちを連れてバーベキューと日没を楽しむ。春から秋の間スウェーデンでは犬を森に放すのは禁じられているものの(森に生まれている子鹿を守るため)、ここに来た時だけはこっそりオフリードにしている。我々が湖畔に止まっている限り、犬たちは滅多に森の中に入ろうとせず水のそばから離れない。そう、我が愛犬たちはレトリーバーだ。水が大好き。ここで自由に走ったり泳いだりする彼らを見るのは、ソファで寝そべりテレビを観るよりも楽しい。

湖畔から帰宅したある夜のこと。アシカがピーピー泣いている。顔を見ると何かお化けにでも出会ったような表情をしていた。しゃがんで彼女を迎え入れた時、異常に気が付いた。何しろ尾が振られていないのだ。のみならず、力なくダラリと下がっている。その下がった尾をひょいと上に持ち上げたら、アシカは「ギャン!」と鳴いた。

「これが、あのコールド・テール症候群?!」

コールド・テールについての詳しい説明は尾形さんのブログを参照されたい。これまで18年間ずっとレトリーバーを飼い続けていたのだが幸運なことにどの犬もコールド・テールにはならなかった。今回のことは私にとって初めてであり、それだけにアシカの様子にはショックを受けた。

痛み止めを与えたら歩き回るようになったアシカ。しかし相変わらず尾は力なく下がっている。典型的なコールド・テールの症状。この日、散歩は15分の歩きを1日2、3回行うことでとどめておいた。安静は絶対に必要だが、犬が望んでいるのなら、やはり適度に動き回らせるべきだ。さもないと余計に体を硬くしてしまう。

コールド・テール症候群は水から上がってしばらくじっとしたままでいるなど、体が冷えたりするとなりやすいそうだ。道理で…。外気は暑く感じるほどであったが、夏になったばかりスウェーデンでは湖水の温度が追いついておらず、水は冷たかった。そして日没を楽しむため我々は岸にかなり長い時間いすわっていた。それも犬たちはずぶ濡れ状態のままで…。

夜が明けると共に、私はどうしたらいいか相談を仰ごうとアシカのブリーダーに電話した。ブリーダーは「犬用の痛み止めと抗炎の効果のある薬を与えるといいわ」と私に数錠を譲ってくれた。運が良かった。この日は休日。ローカルな獣医クリニックは休み。それにしても子供と犬というのはどうして休診日に限って突然の病気にかかるのだろう…? 痛み止めを与えると3〜4時間後に効きはじめた。相変わらずだらしなく尾は垂れ下がっていたものの、ラッコと遊ぶようにすらなった。座ることもできるようになった(それまでは痛くて避けていた)。そして3日後には薬なしでも元どおりの状態に。尾にも表情が戻った。

コールド・テールは水に入った時だけではない。私の友人のカーリー・コーテッド・レトリーバーは、冬の雨に打たれて罹ったと言っていた。そしてこの症候群、なんとレトリーバーなどガンドッグがなりやすいとも。皮肉ではないか、こんなに水が好きな犬種なのに。さらに一度かかると、個体によってはその後何度も再発するようになる。前述の友人のカーリーはただしその犬生において一度しか起こらなかったようだ。

アシカにはフィールドトライアルの練習や狩猟など、水に入る機会はこれからいくらでもある。おまけに狩猟期は秋で、水の温度は今よりさらに下がっている。どうしたらいいのだろうか。そこで獣医師や同じようにコールド・テール症候群に罹ったことがある犬と暮らす人に聞きまわり、いくつかアドバイスをもらったので、ここでシェアしたい。

コールド・テールに一度なったからといって、決して「水にはいっちゃいけません」状態を作る必要はない(皆さんはかかりつけの獣医さんにこの点はよく相談すべきだろう)。そもそも、水が好きな犬であれば、その楽しみを奪うことになる。水の温度と外の気温とよく相談してみること。

冷たい水に入ったらとにかくすぐにタオルで乾かすこと!コールド・テール経験後、私はアシカを連れて何度も水に入ったが、その度によ〜く乾かしている。今のところ再びコールド・テールにはなっていない。

水が冷たい時、2〜3回ぐらいならいいけれど、何度も何度も犬を水にいれない。

水に入ったあと、外気の温度が低く風が吹くような場所で犬を濡れたままじっと待機させないこと!

車で犬と移動する人は、車内に体を拭くタオルを常備しておくとグッド。これならいつ水に入って濡れても大丈夫。

体を拭く時に、特にお尻部分から尾の付け根を十分乾かして!ここが冷えると、コールド・テール状態になる。

冷たい水につかったあと、血行をよくするために腰部のマッサージがおすすめ。

背の尾の付け根にワセリンを塗って水が皮膚にまで浸透しないようにしておくのも一つの手段。

寒い時期、雨が降っている時は犬のレインコートもおすすめ。ただしコートは犬のお尻部分(腰から尾の付け根まで)を十分にカバーしていること。

獣医さんから抗炎症薬を処方してもらい、いざという時のために常備しておこう。

犬を乾かすために、超吸水性のあるマイクロファイバー製のタオルを持っていると重宝だ。

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