ご褒美言葉、いくつ持っている?

文と写真:藤田りか子

褒め言葉はいいから、撫でてくれるか、トリーツをちょうだいな…

少し前の研究になるのだが、犬は人から出される「褒め言葉」をそれほど有難がっていないという報告をアメリカのフロリダ大学とアリゾナ大学のFeuerbacher E.Nと Wynne C.D (2015)が発表した。言葉よりも撫でてもらうなど触ってもらう方を好むということだ。それぐらい犬と人にとって身体的な接触というのは絆づくりにとても大事な役割を果たしている、ということだろう。

だからと言って

「犬に『よし!』と明るく褒めてあげても意味がないのね!」

などと落胆するなかれ!というのも、我々は愛犬を愛おしく思うあまりにただ褒め言葉だけを言い渡す、ということはまず通常ないはず。大抵の場合「いい子だね!」と言いながらその顔やら胸を撫でまくっているものだ。かと思えば、上手にできたね〜と褒め言葉をかけながらトリーツを与えていることもある。だから、褒め言葉=楽しい思い出、という方程式はおそらく多くの飼い犬の頭の中にインプットされている。前出の研究でも「言葉で褒める場合は別に特別な条件が付いていなければならない」と述べている。

早く「いいよ!」って言ってくれないかなぁ…!!

「特別な条件が付随している褒め言葉」、というのなら「よし!」に限らず、皆さんもいくつかレパートリーを持っているのではないだろうか。クリッカーの音もその意味で褒め言葉だ。クリッカー=トリーツという連想が犬の頭の中にできている。私と愛犬の場合、「いいよ!」というのがまず一つ。例えば車から出るときなど一旦待ってもらってその後に出す許可言葉なのだが、犬の感情の中では許可もご褒美も関係ないと思う。その後自分がやりたい、行きたい、と思っていたことができるのだ。その意味でやはり「いいよ!」はご褒美につながるハッピーな言葉。はしゃぐ犬に一度ブレーキをかけてもらいしばらく側に止まってもらった時、少し落ち着いたところで「いい子!」ではなく「いいよ!」をだす。この言葉の方が次にできることをパッと犬に想像してもらうことができる。と、ご褒美としての意味合いがより強くなる。「いいよ!」が聞こえてくると、犬は立ち上がって好きなことをしてもいい。目の前のトリーツがあれば、それを食べることもできる。

「いいよ!」よりももっと強烈な言葉もありそれは「遊んでけ〜!」。これは犬に完全な自由を促す言葉。飛んだり走ったりあるいは少々私の側から離れてもいい等と大抵のことが許される。ご褒美言葉としてはかなり価値が高い。「いいよ!」と「遊んでけ〜!」を状況によって使い分けることで、犬にごちゃごちゃ細かい命令をせずとも行動をコントロールすることができる。かなり便利なツールでもある。

トリーツとおもちゃを見せて、言葉によってどちらかを選ばせる。

スウェーデンで有名なドッグトレーナーでもあり行動コンサルタントでもあるエヴァ・ボッドフェルトさんは、ご褒美となるトリーツやオモチャを与える時に決してそのまますっとは犬に渡さない。ご褒美言葉を出してから与える。それも何がご褒美かによって言葉は使い分けられる。トリーツの場合なら

「ウマウマ!」

おもちゃの場合なら

「ハッチャケ!」

こんな風にご褒美に対して各々の言葉を作っておくことで、犬は次に何がくるのだろう、とよりハンドラーに集中する、ということだ。エヴァさんの犬は「ハッチャケ!」と言われれば、たとえトリーツとおもちゃを両方を見せられていても、ちゃんとおもちゃの方を選ぶ。

褒め言葉だけでは犬にとってまさに「馬の耳に念仏」。どんなに心を込めて言っても犬目線的にその言葉が意味を持たなければ、全く有難がってもらえない。それが学問的にすら証明されているのはすでに述べたこと。でも一旦犬にとって何か意義があるもの、と理解してもらえれば褒め言葉は躾やトレーニングで素晴らしいヘルプとなる。それに犬に考えさせるという機会を与えることもできるのだ。皆さんも意味のある褒め言葉のレパートリーをどんどん増やしてみよう。

【関連記事】

犬は言葉で褒められるよりも撫でられるのがお好き
文:尾形聡子 犬をトレーニングするときの報酬として "褒める"ことがいかに大切であるかということについて、世の中に広く受け入れられるようにな...