先住犬に認めてもらう

文と写真:藤田りか子

家族として新しくやってきた犬を先住犬に紹介する、というのはちょっとドキドキものだ。皆さんはどんな経験をお持ちだろうか?アシカが我が家にやってくるまで、先住犬のラッコは3年間「一人っ子状態」であった。こうして2暮らしを始めるのは、トドが逝ってしまった以来。「ママ独り占め状態」のおぼっちゃまが、どう新しい子犬に対処するのか…?

2頭の初対面は庭で行った。庭なら広いからじっくりとお互いのボディランゲージを読めるからだ。怖いと思ったらアシカはいつでもベランダの下や私のそばに走って隠れることができる。が、いざ会わせてみると初対面儀式はあっけなく終わり…。あとは「こんな得体の知れないチビッ子とは関わりたくない!」とばかり、ラッコはさっさと離れていった。そして庭のそこここにシッコをかけた。私の経験からすると、どうもオス犬というのは子犬を気持ち悪がるようだ。

その後もラッコはアシカを避け続けたが、10日後の日曜の朝、彼はアシカのことを認めたのか、そばに来られても嫌がらず突然ごろりと横になった。アシカは嬉しがり、早速ラッコの体によじ登りじゃれついた。こうして2頭のワニ遊びが始まった。口を大きく開けて「噛むぞ噛むぞ」と脅す遊びである。その微笑ましい光景に家族一同胸を撫で下ろした。

アシカが来て2日目。ラッコは相変わらず子犬を避ける。こうして距離をおく。アシカもラッコのシグナルをきちんと尊重し、自分の寝床に陣取る。でも本当は遊びたくてしょうがない!

こんな風に10日目にして和解するのならまだ序の口。私の知人の8歳になるチワワ(メス)のノーラは1ヶ月半経っても新しくやって来た子犬サリーを受け入れることができなかった。子犬は遊びたくてしょうがなく、ノーラに近づく。

「そしてノーラを噛むの、きっとサリーはノーラが怖いからだと思う」

と知人は主張したが、それを聞いたトレーナーのKさんは

「この子犬怖がってなんかいないわよ。ノーラの『独りにしてくれる?あっちへ行って!』というメッセージを聞こうともせず、遊んで噛んでいるだけ。あなた、そりゃノーラが辛いわ、助けてあげなきゃダメじゃない。こういう時は飼い主が子犬のけじめをつけること」

Kさんの一喝後、知人はノーラの「子犬がうるさい」と思う気持ちを肯定することにした。そして時には子犬から解放されるよう、ノーラを独りにしてあげた。ノーラのシグナルを無視したら、「だめ!」と子犬の行動を制御するようにもなった。こんなやり取りを通して先住犬は飼い主を信頼するようになり、群は安定する。

犬の世界は決してディズニー映画ではない。「うちの子なら犬同士は仲良くならなきゃ!」とつい思いがちだ。が、彼らにだって相性というものがある。決して無理矢理に会わせたりするなど急いてはいけない。時間を与えること。そして、ノーラのような「子犬嫌い!」という気持ちを尊重することも大事だ。

そしてこれが2週間後。ラッコとアシカは口を大きく開け歯を見せながらガウガウするワニ遊びに興じる。ラッコはできるだけ歯を唇でカバーして見せないようにしているのに注目。

さてサリーが来てから6ヶ月たった今。相変わらずノーラはサリーのことを好きになれないそうである。

「多分ノーラはこれからも絶対にサリーとは仲良くならないでしょう。でも互いが互いの存在を認めるようにはなっています。《仲良くするように》の代わりに《ノーラを放っておいてあげようね》ということを子犬に教え続けました。寝ている時はノーラのベッドに近づいちゃダメ、とか。でも、これが一番シンプルでいいんじゃないかなって。こういう犬の関係あるものなんだと素直に認め始めたら肩の荷がおりました」