犬のマズルに見られる若白髪の原因は?

文:尾形聡子

[photo by ryan]
よく見られる犬の白髪はこのような加齢性のタイプ。

加齢による体の変化のあらわれのひとつ、白髪。その現象は人だけでなく犬にも見られます。黒髪の日本人と同じく黒い被毛の犬はとりわけ白髪が目立ちやすいですが、どんな毛色の犬であってもその多くは、歳をとるとともにマズルあたりの毛に白いものが混ざってくるものです。しかしまだ若い犬であっても、マズルに若白髪がでてくることがあります。

人での若白髪の原因は主に4つ、遺伝、病気、酸化ストレス、仕事のストレスの影響があるとされていますが、犬の若白髪にはどのような要因が関与しているのでしょうか。『Applied Animal Behaviour Science』に発表された研究によりますと、ストレスが犬の若白髪に関係しているだろうことが示されたそうです。

研究者らはアメリカのコロラド州周辺にあるドッグパーク、ドッグショー、動物病院、犬の集まるイベントなどに出向き、1歳から4歳の400頭(オス202頭、メス198頭)の犬を対象に調査を行いました。犬の白髪の程度を判別とともに、飼い主には自らの犬の性質についてのアンケート調査を行い、そこに相関関係が存在するのかどうかを解析しました。ちなみにこの研究では、白い毛またはクリームなどの薄い毛色の犬は白髪がどのくらい生えているのかを判定するのが困難なため、研究対象から除外したそうです。

[image from Applied Animal Behaviour Science]
研究での「白髪度合い」の判定基準。
各々の犬白髪の判定は2つの角度から撮った写真(正面図、側面図)を使用し、白髪なし(0)から、白髪が最も広がっている(3)の4段階に分けて行われた。

その結果、若い犬に見られる白髪は、不安行動(独りでの留守番中の破壊行動、新しい場所が苦手など)と衝動性(静かに落ち着くことがない、運動後に過剰な興奮をするなど)と明らかに関連性があることがわかりました。さらに、雷など大きな騒音への恐れ、見知らぬ動物や人々への恐れが若白髪がでてくる予測要因になることも分かったそうです。また若白髪のでやすさには性差も見られ、メスのほうがオスよりも若白髪になりやすいことが示されたそうです。一方、体のサイズ、不妊化の状態、医療的な問題と若白髪とには関連性が見られませんでした。

これらのことより研究者らは、不安、衝動性、恐れが4歳以下の若い犬の若白髪のでやすさの指標とすることができるだろうと結論しています。これまで犬の若白髪の原因は、トレーナーなどの経験からある程度想定されていました。しかし今回初めて学術的な調査結果が出たことで、今後、犬の福祉状況を知るひとつの指標として使うことができるだろうとしています。

犬が抱えるストレスを、私たちはなかなか気づくことができない場合もあるでしょう。しかし、若白髪という目に見える形でストレスのあらわれがでてきているならば、それを見過ごしてはならないと思います。何かしらの慢性的なストレスが犬にかかっているかもしれませんし、知らず知らずのうちに犬にハラスメントをしている、そんな可能性もあるかもしれません。そして原因は1つではないかもしれません。何が愛犬の若白髪の原因となっているのか、今回の研究結果を参考にしながら、愛犬について、そして自分自身について振り返り、対応していけるといいのではないかと思います。

(本記事はdog actuallyにて2017年1月5日に初出したものを一部修正して公開しています)

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Anxiety and impulsivity: Factors associated with premature graying in young dogs
The present study examined the association of anxiety and impulsivity with premature muzzle grayness among young dogs. A sample of 400 dogs, ages 1–4 …

【参考サイト】
NIU Today