文:尾形聡子

[photo by vitaliymateha]
犬と飼い主との間には、親子の間に見られるものとよく似た「愛着」が形成されることが、これまで多くの研究から明らかになっています。犬にとって飼い主は、怖いことや不安なことがあったときに頼れる存在であると同時に、安心して周囲を探索したり、新しいことに挑戦したりするための「安全基地」にもなります。
そのような飼い主への愛着行動は、犬の生涯を通じて同じように表れるものなのでしょうか。
人の場合、乳幼児期に形成された愛着はその後も重要な役割を果たしますが、成長とともに愛着対象との関わり方や愛着行動の表れ方、愛着対象そのものも変化していきます。そして高齢期になり、身体機能の低下などによって他者からの助けが必要になると、愛着対象にサポートを求める傾向が強まることもあります。
犬でも、子犬のころから飼い主に対して人の子どもによく似た愛着行動を示すことが知られていますが、成犬や高齢犬を対象にした研究からも、人の愛着に見られる特徴との共通点が報告されてきました。しかしこれまでの研究の多くは、子犬、成犬、高齢犬といった、犬の生涯のある時点を切り取って調べたものでした。
そこで、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究チームは、非常に若い子犬から高齢犬までを対象に、ライフステージによって飼い主への愛着行動に違いがあるかどうかを調べました。
さらに研究チームが注目したのが、犬がそれまでに積んできた「トレーニング経験」です。トレーニング経験は、犬の恐怖や不安、問題解決、自己コントロール、人との協働作業など、さまざまな行動や認知と関連することがこれまでの研究で示されています。そこで今回の研究では、成犬を対象に、トレーニング経験と

