文:藤田りか子
[Photo by Matthias Weinberger]
ノーズワークは、ドッグスポーツとして世界的にブームになっているだけに、今や学術的な舞台でも注目を集めるようになっている。これまで確かに犬の嗅覚に関する研究は数多く行われてきたものの、その多くは職業探知犬を対象にしており、麻薬や爆発物の探知、あるいはガン検知といった実用的な目的に焦点を当てたものが中心だった。もちろんこうした研究の方が資金を得やすいという背景もあるだろう。しかし、昨年そして今年(2025年)ハンガリーの研究チームが発表した犬種別嗅覚能力に関する調査は、職業犬ではなく家庭犬を対象にした珍しい試みだ。今までになく「犬の嗅覚」に、多くの関心が集まっているのがわかる。
さて、みなさんは犬種によって嗅覚能力に差があると思うだろうか?それとも、犬なら嗅覚がいいのは当たり前で、違いがあるとすれば犬種ではなく個体ごとの差にすぎない、と考える?ま、人の嗅覚の良し悪しも、人種ではなく個人によりけり。そう、だれもが優秀なソムリエになれるわけではない。とはいえ、麻薬探知犬といえばラブラドール・レトリーバーが定番だし、足跡追及を担う警察犬とくればジャーマン・シェパード。なぜ麻薬探知犬にキャバリア・キングチャールズ・スパニエルがいないのか、なぜ嗅覚を仕事とする警察犬に日本犬はいないのか…? やはり犬種によって嗅覚の得意不得意がある証拠なのか。この問いにハンガリーの研究者たちが挑んだ。