文:藤田りか子
[Photo by Richard Masoner]
犬は本当に楽しんでいるのだろうか
そのむかーし私が日本に住んでいた頃、ドッグランなんて言葉は聞いたこともなかったし、そんなものはおそらく日本には存在していなかったと思う。それがいつの頃からか高速道路のサービスエリアに登場するようになり、ついには「犬の施設」というと必ずドッグランが併設されるようになっていた。
ドッグランの犬たちはなるほど楽しそうだ。犬同士があっちにこっちにダマになって走り回り、いかにも犬生活をエンジョイしている印象を与える。でもそれを見る度になんとなくザワザワとした感情が湧いていたのも事実だ。もう10年前ぐらいになるが、とある日本の保護犬施設のドッグランで犬たちが走る様子を眺めていたら、同行していたスウェーデンのインストラクターJさんがこう言った。
「あれって、本当に犬が楽しんでいると思う?」
それを聞いて「あ、そうだよ!」と思った。「やっぱりドッグランてあまりいいものじゃないのかもしれない」とこれまで無意識に感じていたことが、意識上に持ち上げられたときだった。そして犬たちが走り回っている様子を、冷静にもう一度詳細に観察してみた。すると自分が今ひとつドッグランについてしっくりとした気持ちになれなかった原因が見えてきた。そこには、ややもすると