競技会ノーズワークをしながら撮影する方法

文と写真と動画:五十嵐廣幸

日本では今年もまたノーズワークスポーツクラブが主催する競技会が開催されると聞いた。競技会で自分と愛犬のパフォーマンスを録画したい方のために、撮影にお勧めのカメラや用品、そしてうまく写すコツを伝授しようと思う。

競技の動画は自撮りで!

オーストラリアでは競技会に参加しているハンドラーの1割ぐらいが、愛犬のサーチの様子を動画に撮っている。私もその一人だ。競技会には年間10回以上出場しているが、毎回動画を見返して学べることは多い。愛犬のChange Of Behaviorを見逃していたとか、風で揺れる葉をみて風向きを読むのを怠ってしまった、などなど。いろいろと反省点がでてくる。

ノーズワークの競技会は他の多くのドッグスポーツと異なり、リングの周りに観客がいない状態で行われる。だから友人にサーチの撮影をお願いするということができない。よって自撮りでしか動画に収める方法はないのだが、片手にスマホやカメラを持ったままサーチ、なんてことは到底無理。サーチ中は、リードをさばいたり犬にトリーツをあげたりするために両手が必要だ。そもそも競技に向かうときは、私はスマホは車内に置いていく。万が一サーチ中にメールの通知がきたり、電話が鳴ったりしたら気が散って、競技や今までの練習の成果が台無しなってしまいそうだ。競技は真剣勝負なのである!

では三脚を利用するなどして、固定カメラを使えばいいではないかと思われるかもしれない。しかし一旦自分の名前が呼ばれたら、固定カメラを設定するなどそんな悠長なことをしている暇はない。スチュワードに従いハンドラーは犬といっしょにサーチエリア手前まで行く。スタートラインを前にしてジャッジから、バウンダリ(サーチエリアの境界線)や制限時間などについての再確認が行われたら、即、競技スタートになる。自主練習の様子を撮影するときのように、まずはサーチエリアの近くにスマートフォンを設置して、録画スイッチを押して、スタートラインに行って……そんな行為そのものが競技会では許されない。競技全体の進行の妨げとなるのは明らかだ。

犬にカメラを装着するのももちろんルール違反だ。オーストラリアのルールではカメラはおろか、首輪についている鑑札やネームタグなどジャラジャラと音がでるものも外す。と、残る唯一の手立ては、カメラをハンドラーの体に装着(マウント)して撮影をするというやり方なのである。


この胸に装着したアクションカメラが目に入らぬか!

アクションカメラをおすすめ!

犬と散歩しながらスマートフォンで動画撮影をした経験のある方なら分かると思うが、歩きながら撮影すると映像がぐらぐらと揺れて、とてもじゃないがその映像は見られたものではない。そこでお勧めするのが手ブレ防止機能がついているアクションカメラだ。

お勧めのカメラ三選

GoPro Hero 12 Black

アクションカメラといえばGoProである。土砂降りの雨で濡れても壊れず撮影できるタフなカメラ。超強力な手ブレ防止機能のおかげで、走ってもブレない映像を収めることができる。またハイパービューといった超広角の撮影もできるので、足元にいる犬の動きもしっかりと記録できる。映像はどちらかと言えばコントラストが強めで、晴れた日には綺麗な映像が撮れる。しかし、暗い室内や夜間撮影などが苦手である。スペックについてはこちらをクリック

ハンドラーの体に装着するには、以下のヘッドストラップやチェスティを利用しよう(↓)。
https://gopro.com/ja/jp/shop/mounts-accessories/head-strap-2.0/ACHOM-002.html

gopro.com

DJI OSMO ACTION 4

2024年、YouTuber達がGoPro Hero12を超えたと絶賛しているアクションカメラ。映像を取り込むセンサーサイズは1/1.3インチ。低照度性能はGoPro12よりも格段にアップ。にもかかわらず、手ブレ防止性能はGoPro12と同等レベルという優れもの。映像のコントラストはGoPro12よりも抑えめという印象だ。スペックについてはこちらをクリック

ハンドラーの体に装着するには、別売のOSMO Actionチェストストラップマウントを利用。
https://store.dji.com/jp/product/osmo-action-chest-strap-mount?vid=120741

Insta360 Go 3

軽量かつ小型にもなるカメラ。上記にあげたGoPro12 やAction 4と一番違う点はカメラの大きさと軽さだ。アクションポッドと呼ばれる本体からレンズのある部分だけを分離しても撮影ができる。分離したときの重さわずか35g、世界最小のアクションカメラでもある。ちなみにGoPro12の本体の重さは153g(バッテリーを含む)、 DJI Action4の重量は145g。Insta360 Go 3にも手ブレ補正機能がついているのでノーズワークでも十分使える。体の装着には付属アクセサリーの磁気ペンダントでOKなので、あらためてチェストストラップといったものを買う必要はない。そしてもう一つのメリットはカメラが小型に変身するので“撮っています感”があまりない。スペックについてはこちらをクリック

撮影の流れ

順番待ちから録画スタート

4年ほど前に購入したGoPro 9を今でも使っている。そろそろ順番待ちの列に並ぼうという頃に、GoProを装着したチェストストラップを身に着ける。私のそれはちょうどベストを着るような感じだ。

自分の順番前のハンドラーが競技エリアに向かったら、すぐに録画を開始しておく。まだ録画ボタンを押すのは早いなんて思ってはいけない。前のハンドラーがエラーアラートや失格などで開始から30秒で競技終了、というのも珍しくない。すぐに自分の出番がやってきて大慌てでサーチエリアに向かい録画するのをうっかり忘れた、なんてことも起こりうる。

のみならずサーチ中では気をつけるべきことが多い。犬の行動を読むだけでなく、風向きを気に留めたり、アラートの後にフィニッシュとジャッジに伝えるのを忘れないようしたり。だから少しでも競技に意識を集中させておくために、順番待ちの段階で録画をスタートしておく方がいい。

スチュワードに呼ばれ競技エリアへ

競技エリアに向かったとたんに、自分が撮影していることはすっかり忘れている。カメラがあることも、チェストマウントをつけていることもすでに頭にはない。もっとも競技が終わった直後でも、どこにハイドがあったか、またどんなサーチレイアウトだったかも、思い出せないぐらい、競技中は犬の行動を読むのに集中しているのだ。

自分の順番が終わっても動画は見ないで

全参加者のサーチが終わるまで、競技の内容のことについて話したり伝えたりすることは一切禁止。友達から競技の結果を聞かれた時には、競技にパスしたならば、親指を立ててグッドマーク。パスできなかったら反対に親指を下に向けて成果を伝える。

競技は真剣勝負の場所だから、自分の出番が終わったからといって撮影した動画を再生するのはルール違反だ。自分はパスできなかったし再生しても問題ないでしょ?なんていう人もいるかもしれないが、その映像が偶然他のハンドラーの目に入れば競技に影響を与えてしまうこともある。だから撮った映像をみるのは自宅に戻ってからがよい。

以下は私が競技会で自撮りした動画だ。画質やアングルを参考にしていただければと思う。

ノーズワーク競技会/最高難易度Masterに初挑戦

ノーズワーク競技会/車両サーチ

競技会実況中継 ノーズワークで犬を読む

文:五十嵐廣幸(いがらし ひろゆき)
オーストラリア在住ドッグライター。
メルボルンで「散歩をしながらのドッグトレーニング」を開催中。愛犬とSheep Herding ならぬDuck Herding(アヒル囲い)への挑戦を企んでいる。サザンオールスターズの大ファン。
ブログ;南半球 deシープドッグに育てるぞ
youtube;アリーちゃんねる