文:藤田りか子
[Photo by sabsykorova]
最初はだれもが犬のトレーニングの初心者だったはずだ。しかしいつしかその差は歴然となって現れてくる。ある人はさっさとトレーニングのコツを学び、スキルをどんどん磨いていく。そして数年後には、上級レベルの競技会にも顔をだすように。かと思えば、同じ時間をかけていてもなかなかコツをつかめず犬を扱う能力に伸び悩む人もいる。
ドッグトレーニング前線の真っ只中にいる筆者としては、なぜこの差が生じるのかにとても関心がある。うまい人とそうではない人を分けるのは何なのだろう?それはハンドラーの能力なのか、犬の素質なのか、それともどちらもなのか。もし両方だとしたら、どの要因がどう影響し合っているのか?興味がつきない永遠のトピックスだ。犬曰くでもこれまでにいくつか関連した記事を出している(この記事の最後にリストがあるのでご参照を)。
2021年に発表された「ドッグトレーニングのサクセスは何によって予想できるのか」を調査したアメリカの研究を紹介したい。これまでにもいくつか似たような論文が発表されており、たいていはビッグファイブから見た飼い主(あるいはハンドラー)の性格を要因として関連づけていた。この研究がユニークなのは、ビッグファイブのみならず飼い主の認知能力もトレーニング成功要因としてその可能性を調べていたところ。この面から人と犬の関係を考察するというのは、犬学世界ではまだあまり見られない珍しいアプローチだ。
認知能力はこう測定した!
興味をそそられたのは、本研究で認知能力を測定するために使われた二つのテストである。認知反射テスト(Cognition Reflection Test) とベルリン・ニューメラシー・テスト (Berlin Numeracy Test )だ。どんなテストなのだろうと調べたら、なんと!頭の捻りが必要な、ちょっとしたIQテストだった。たとえば以下の認知反射テストの質問、みなさんすぐに答えられるかな?人の直感と洞察力を試すものだ。
あるスポーツ店でで野球のバットとボールがセットで1,100円で売られている。バットの値段はボールよりも1,000円高い。ではボールの値段はいくら?