文:尾形聡子
[Image by Henryk Niestrój from Pixabay]
犬や猫などの動物を保護する施設、アニマルシェルターは世界各国に存在しています。どうしても犬を飼い続けられなくなる事情は、いつ何時どんな飼い主の身にも起こらないとは限らず、そのような緊急事態の最中に間を空けることなく新しい家庭を見つけることは、自分ひとりの力だけでは難しいものです。また、家庭の事情のみならず、自由に繁殖する野良犬が増えてしまわないよう保護する際も、シェルターがあるからこそ守られている命があるという側面もあります。シェルターが必要ではなくなる世の中になることが理想ではあるものの、人が犬と一緒に暮らす選択を続ける限り、シェルターの存在は重要だと言えるでしょう。
しかし、シェルターという慣れない環境での生活は、元家庭犬であっても野良犬であってもストレスがかかります(「犬の被毛が教えてくれる、シェルター生活のストレス」参照)。日本でも近年、従業者一人あたりの最大飼育頭数や生活空間の広さなどについては具体的な数値基準が設けられ、物理的環境の向上を図ろうとしていますが、それだけがシェルターに保護されている犬の福祉を守るすべてではありません。海外においては、シェルターで生活する動物たちの福祉向上を目的として、これまでにさまざまな角度から研究が行われてきています。
中でも、シェルターの犬と人との交流については福祉研究においてもっともよく研究されていることのひとつです。犬も人と同じ社会性を備えた動物のため、そのような動物に社会的な接触を強く制限してしまうことはストレスの原因となるからです。実際に、シェルター犬が人とたった15分間でも交流をするとリラックス効果がもたらされたり(「優しく撫でて話しかける~15分間の人との交流がシェルター犬にもたらすいい影響」参照)、シェルターの外で人と一緒に過ごす時間を持つと、犬のストレスが軽減したり行動が改善されることが一貫して示されています。さらには、フォスター(一時預かりボランティア)の家庭に1泊〜2泊の外泊をすると、犬のストレスレベルが低下し、休息時間が長くなることも示されています(「ストレスから解放されるひと時に~シェルター犬の「週末のお泊り」」参照)。
ですが、これらの効果は一時的であり、シェルターに戻って時間が経てば、シェルターにいるときのベースラインのストレスレベルや活動レベルに戻ることもわかっています。ですので、シェルターの犬の福祉向上を考えるとき、