文:尾形聡子
[photo from Adobe Stock] ウェルシュ・コーギー・カーディガン。
イギリスを原産とする犬種というと皆さんは何を思い浮かべますか?
世界中で愛されているラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーは言わずと知れたイギリス原産の犬種。そのほかにも、ジャパンケネルクラブ(JKC)の2022年の犬種登録数のリストを見てみると、ヨークシャー・テリア(8位)、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク(14位)、ジャック・ラッセル・テリア(17位)、ボーダー・コリー(18位)、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(22位)などイギリス原産の犬種名が並んでいます。
さすがはケネルクラブにドッグショー発祥の国だけあり、イギリスには日本とは比べ物にならないくらい多くの原産犬種がいます。しかしながら犬種の流行があるのは日本と同じで、古くからイギリスで愛されてきた犬種であっても、その登録頭数には非常にばらつきがあります。
イギリスのケネルクラブ(KC)では犬種を維持していくのにリスクがあると考えられる、年間登録頭数が300頭未満のイギリスとアイルランド原産の犬種を「Vulnerable Native Breeds」としてリストアップしています。犬種の登録頭数が少なくなるということは、繁殖犬の頭数も減っていることを意味します。つまり、遺伝子プールが狭くなり犬種存続の危機に陥るかもしれないという懸念から、KCはそのリストの犬種を保護していこうと国民に働きかけをしているのです。
飼育頭数が少なければその犬種の存在自体を知るチャンスは低くなります。当然のことながら、知らなければその犬種を迎えることを検討することすらありません。自国の犬種が姿を消すことのないよう、それらの犬種をあらためて人々に周知することで、自分のライフスタイルに合う犬がその中から見つかるかもしれないとKCは言っています。ラブやゴールデンなど世界中で大人気の犬種だけでなく、自国のあらゆる犬種を大切にしたいというイギリス人の犬に対する強い思いを感じるものです。
[photo from WIKIMEDIA] 6番目に登録件数が少なかった、スムース・コリー。
今回発表された「Vulnerable Native Breeds」には34犬種の名前がありました。以下、2022年の登録頭数の少ない順番に並べてみました。知っている犬種も結構あるのではないでしょうか?
- フォックスハウンドFoxhound
- ハーリアHarrier
- グレイハウンドGreyhound
- オッターハウンドOtterhound
- ブラッドハウンドBloodhound
- スムース・コリーCollie (Smooth)
- サセックス・スパニエルSpaniel (Sussex)
- フィールド・スパニエルSpaniel (Field)
- トイ・マンチェスター・テリアEnglish Toy Terrier (Black & Tan)
- キング・チャールズ・スパニエルKing Charles Spaniel
- スカイ・テリアSkye Terrier
- カーリーコーテッド・レトリーバーRetriever (Curly Coated)
- アイリッシュ・レッド・アンド・ホワイト・セターIrish Red & White Setter
- アイリッシュ・ウォーター・スパニエルSpaniel (Irish Water)
- スムース・フォックス・テリアFox Terrier (Smooth)
- マスティフMastiff
- ノーリッチ・テリアNorwich Terrier
- ダンディ・ディンモント・テリアDandie Dinmont Terrier
- アイリッシュ・グレン・オブ・イマール・テリアGlen of Imaal Terrier
- ケリー・ブルー・テリアKerry Blue Terrier
- レークランド・テリアLakeland Terrier
- シーリハム・テリアSealyham Terrier
- ランカシャー・ヒーラーLancashire Heeler
- マンチェスター・テリアManchester Terrier
- アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアSoft Coated Wheaten Terrier
- ディアハウンドDeerhound
- ウェルシュ・コーギー・カーディガンWelsh Corgi (Cardigan)
- イングリッシュ・セターEnglish Setter
- クランバー・スパニエルSpaniel (Clumber)
- アイリッシュ・ウルフハウンドIrish Wolfhound
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエルSpaniel (Welsh Springer)
- ゴードン・セターGordon Setter
- ビアデッド・コリーBearded Collie
- ミニチュア・ブル・テリアBull Terrier (Miniature)
[photo by Mattias Agar] 犬曰くではラッコでお馴染みのカーリーコーテッド・レトリーバー。日本でもなかなかお目にかかることはありません。
藤田りか子さんの愛犬ラッコの犬種、カーリーコーテッド・レトリーバーの登録犬数を見てみると、2022年は73頭、遡って62頭、55頭、68頭、70頭、53頭と6年にわたり100頭を下回っている状況です。どんなにカーリーコーテッド・レトリーバーが素晴らしい犬であっても、毎年これだけの犬しか登録されていなければ、カーリーの魅力に触れることのできる機会などなかなか巡ってこないはずです。かく言う私は日本でカーリーと出会ったことは一度もなく、スウェーデンに行って初めてカーリーのラッコと会い、すっかり彼の魅力にとりこになったのでした。

ちなみにKCの2022年の登録数トップ10の犬種はこちら。半分以上が自国の犬で(○印がイギリス原産)、トップ10の登録総数が全体の60%をも占めている状況だそうです。日本の人気犬種と比べるとかなり顔ぶれが違います。
- ラブラドール・レトリーバー◯
- フレンチ・ブルドッグ
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル◯
- ミニチュア・ダックスフンド(スムース)
- ブルドッグ◯
- ゴールデン・レトリーバー◯
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル◯
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- スタッフォードシャー・ブル・テリア◯
- ミニチュア・シュナウザー
[photo from WIKIMEDIA] 某ケイタイ会社のCMで知名度がぐんと上がった北海道犬。しかし2022年のJKCへの登録は53頭のみ。
日本の状況はどのようになっているのか気になったので、JKCの2022年年間登録頭数のリストにある日本原産の犬種を見てみました。多い方から柴(8,568頭)、日本スピッツ(1,151頭)、秋田(474頭)までは300頭以上の登録があったものの、狆(296頭)、甲斐(106頭)、日本テリア(89頭)、四国(72頭)、北海道(53頭)、紀州(36頭)といくつもの犬種がKCでいうところの「Vulnerable Native Breeds」に該当する登録頭数でした。
日本犬の場合は、JKCとは別の犬種団体に登録しているケースもありますので単純にKCの基準に当てはめることはできませんが、海外でそれなりに知名度がある犬種ならともかく、これらの日本の原産犬種が絶滅しないよう守っていかなければ日本からいずれ姿を消してしまうかもしれません。
このようなことを書くと犬種至上主義のように思われてしまうきらいもあるのですが、決してそういうわけではありません。あらためて犬種とは何かということを、愛犬家の一人として考えてみることも大切だと思っています。この機会にぜひ藤田りか子さんの以下の記事をご一読してみてください。
