文:尾形聡子
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“無添加”“天然素材”などとうたった犬グッズが増えている昨今、それは愛犬の健康を気遣う人が増えていることの証のように感じます。ドッグフードやおやつなどの食品だけでなく、ペット用品においても健康志向が見られます。天然ハーブの虫除けスプレー、無添加・無香料のシャンプーなどインターネットで調べるとたくさん出てきて、その商品数たるや目を見張るものがあります。
私たち人間の生活の中にはさまざまな香りがつけられた商品が山のようにありますが、犬用品も然り。もともと日本では香りの強すぎるものはあまり好まれない傾向がありますし、近頃は無香料のペット用品も増えています。一方で、犬の鋭い嗅覚を利用した忌避剤としての商品も販売されています。
商品を選ぶのはあくまでも飼い主であり犬ではありません。つまり、犬が大好きなにおいでも、飼い主が好まないものはペット商品として開発されにくいと考えられます(トライプなどの食品は除く)。もし同じ効能を持つものなら自らがよりいい香りと感じるもの、あるいは犬も好きで自分も好きな香りのするペット用品を選びたいと思うのではないでしょうか。また、ハンドクリームや香水、部屋の中で楽しむお香やアロマなど、人用の商品を使うときにはなるべく犬が苦手な香りは避けたいと思ったりもするものです。
そもそも、においの感度が違う人と犬が同じ物に対して常に同じようににおいを感じているとは限りません。思わず顔を背けたくなるような動物の腐敗臭や糞便のにおいに犬がウットリするような場合もあり、人と犬のにおいの好みの違いはなかなか奥深さを感じます。しかし、においの強い動物性の食べ物以外における犬のにおいの好みに関する科学的データはほとんどないのが現状です。そこで、ポーランドのルブリン生命科学大学の研究者を中心としたチームは、犬用品に使われることの多い植物由来のにおいを中心に、犬と人の両方にとって「いい香り」と感じる可能性のあるものを探索すべく、実験を行いました。
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