文:尾形聡子
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一般の家庭に比べて自由度の低いシェルターでの生活は、えてして犬にストレスがかかるものです。もちろんシェルターによって環境の程度には差はありますし、家庭だからといって必ずしも環境がいいわけではありません。ですが、シェルターでの生活が少なくとも犬にストレスを感じさせていることは犬の被毛を解析した研究により示されています。
見慣れない人や犬、そしてさまざまなにおいなど、シェルターという新しい環境の中で急増するストレスにより、保護された犬は自らの行動を抑制したり、逆に誇張するなどの変化をあらわしたりするものです。そのため、シェルターに保護された犬の福祉をなるべく低下させないようにするための研究が世界的に行われています(「優しく撫でて話しかける~15分間の人との交流がシェルター犬にもたらすいい影響」など)。ただし、シェルターでよく行われる保護犬の行動評価が、新しい家庭に迎えられた後の犬の行動を正確に予測するものかどうかに関する研究については、その結果はまちまちなのが現状です。
そして、犬は新しい家庭に迎えられれば、ふたたび新しい環境に慣れなくてはなりません。慣れるまでの間、犬にはポジティブな行動もネガティブな行動もあまり出すことをしない「調整期間」があると言われています。つまり、ある程度長い期間犬の行動の変化を追跡しなければ、新しい家庭に移ってからの行動変化の実態はわからないということが考えられます。しかし、長期にわたる調査はこれまであまり行われておらず、されていても1度きりの調査であることがほとんどでした。
例外的に、最近行われた2022年のアメリカのペンシルバニア大学が保護犬に対する飼い主の期待と返還率とを調査した研究では、家庭に迎えられてから4ヶ月間の3時点(2日後、2週間後、4ヶ月後)において、犬の行動を評価するC-BARQなどを利用して行動変化を調べています。それによると、4ヶ月後には55.6%の犬に見知らぬ人への