犬の飼い主が抱く罪悪感という苦しみ

文:尾形聡子


[photo from Adobe Stock]

「愛犬に対して罪悪感を抱いたことはありますか?」

そう聞かれ、首を縦に振る人と横に振る人、どちらが多いと思いますか?

カナダのペットのオンライン診療サイトを運営するVetster社のペットの飼い主2,000人を対象とした調べによると、56%の飼い主が何かしらの罪悪感を抱いていることが示されています(2021年調べ)。個人的には日本の場合、より多くの飼い主が首を縦に振るような気がします。

犬の飼い主が罪悪感を抱く理由はさまざま。日常的なところでは「早く帰って散歩に行かなくちゃならないのに、なかなか帰れない…」「一緒に遊びたいけど子どもに忙しくて手が回らない…」「もっとちゃんと歯を磨いていれば歯周病にならずにすんだのに…」など、実際に経験していなくても容易にあれこれと浮かんでくるのではないでしょうか。また、安楽死を選択せざるを得ないとき、その決断に対して罪悪感という苦痛に苛まれることも多々あります(安楽死に関しては「安楽死の決定、立ち会いは飼い主心理にどのように影響してくるか?」を参照ください)。

このように、愛犬との暮らしの中のそこここに散らばっているとも言える罪悪感の種。前述の安楽死の記事にあるような、安楽死を対象とした研究こそ行われているものの、意外にも、それ以外のことから生ずる飼い主の罪悪感についての研究はこれまでに行われていませんでした。そこで、アメリカのコロラド州立大学が率いる研究チームは、犬の飼い主が一般的に抱く罪悪感は親が抱く罪悪感のひとつ、ワーク・ファミリー・コンフリクト(work–family conflict:WFC、親が仕事と家庭との狭間で感じる葛藤や罪悪感)と類似しているのではないかと仮定し

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