文:尾形聡子
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「病は気から」
気持ちの持ち方で体の具合はよくも悪くもなるという意味合いを持つ言葉です。すべての病気が100%これに当てはまるわけではありませんが、たとえば長期間ストレスを過剰に感じる(気持ち)状況が続けば、そこからさまざまな体の不調(病気)が出てくるのはよくあることです。
一方、逆の場合はどうでしょうか。「気は病から」とは言いませんが、体の不調が慢性的になれば、気持ちも何らかの悪影響を受けやすくなるものです。体調を崩して気持ちがポジティブになり浮かれるようなことなど通常ありませんから、この逆パターンが起こるのはある意味人にとっては当たり前すぎて、あらためて気に留めることも少ないでしょう。
このような体と心のつながりは、人だけでなく犬においてもみられます。「病は気から」の方は分かりにくいかもしれませんが、「気は病から」の方は、たとえば老犬などで一般的に観察されています。老犬は病気をしていなくても加齢により身体能力や認知機能が低下していくため、これまで怖くなかったものに怯えたり、接触過敏になったり、好奇心が衰えたりすることがあります(加齢による性格の変化については「加齢によって犬の性格はどのように変化していくもの?」を参照)。
老犬でなくても、病気と性格との関係があることはこれまでの研究で示されています。たとえば筋骨格系の病気を持つ犬に騒音が影響をして痛みを強め、結果、痛みが騒音への恐怖を引き起こしていたり、関節が過可動になるほど少しの刺激で吠えたり落ち着かなくなるなど興奮性が高まり、同居犬への攻撃性が高まる傾向があることがわかっています。
病気あるいは体の慢性的な不調は、犬の問題行動とされるような行動の引き金となりうる、つまり、犬の問題行動は医学的な問題が原因となっている場合があるということになります。そのような病気のひとつが